口の中から全身を健康に! 「口腔基礎工学」の果たす役割とは

口の中から全身を健康に! 「口腔基礎工学」の果たす役割とは

医科と歯科に役立つ「口腔基礎工学」

最近では、口の中の細菌が全身の病気に関係していることがわかってきました。口の中の細菌やその毒素が全身を回って、慢性炎症を起こし、さまざまな病気の原因となっている可能性があるのです。歯科の治療は虫歯だけでなく、体全体の医療にも関わっています。「口腔基礎工学」とは、生物系と工学系の分野を融合した、歯科と医科の両方に役立つものづくりをめざす、比較的新しい分野の学問です。

歯をコーティングすれば全身が健康に

例えばインフルエンザは、歯を磨いたり口をゆすぐなど、口の中をきれいにする口腔ケアの指導をしている学校とそうでないところでは、明らかに罹患(りかん)率が違います。口の中に細菌が多いと、ウイルスが増殖する原因になるのです。
そこで、歯に細菌がつきにくくするようなコーティング剤の研究開発を始めました。歯のコーティングは、ただ虫歯や歯周病になりにくいだけではなく、全身の健康を維持し、病気を予防することにもつながると期待されています。

骨の再生で歯科医療が進む

歯医者で必要な治療は、あごの骨が足りないとうまくいかないことが多くあります。入れ歯を入れるにしても、あごの骨が薄い場合は、入れ歯が動いて安定しません。また、インプラント(人工歯根)の治療をする場合にも、骨が足りなくて治療そのものができなかったり、神経にさわってしまったりということがあります。そういうときには、骨を増やす手術が有効です。しかし手術では、横の幅はある程度広げられても、高さを作ることはなかなかできません。
そこで、骨が欲しいところに「BMP」という骨形成因子を注射で打って、骨を作るという方法が開発されています。これだけで高さを作ることは難しいので、OP3-4というペプチドといっしょに混ぜて打ち込むと、垂直に骨ができます。この方法はまだ実験段階ですが、研究を進めていけば、いずれ実用化できるでしょう。また、この研究が進むことによって、全身の骨の再生に応用できる可能性も期待されています。

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先生情報 / 大学情報

東京科学大学 医歯学系(旧・東京医科歯科大学) 歯学部 口腔保健学科 口腔保健工学専攻 教授 青木 和広 先生

東京科学大学 医歯学系(旧・東京医科歯科大学) 歯学部 口腔保健学科 口腔保健工学専攻 教授 青木 和広 先生

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歯学、口腔基礎工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

医療系の職種は、「人のために生きる職業」です。その意味で、医療系は恵まれた職業だと感じています。なぜなら、自分を中心とした目的ではうまくいかないからです。勉学する目的、知識を得る目的、医療技術を習得する目的を自分以外のところに持っていれば、くじけそうなときもやる気を持って続けていくことができます。
いつも目的意識を持って今日覚える1ページが、将来の治療や技術開発に役に立つのだという自負を持ってください。幸せというのは、そういうところにあるのだと思います。

先生への質問

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東京科学大学(Science Tokyo)は、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合して2024年10月に誕生した国立大学です。「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」をMission に掲げ、両大学のこれまでの伝統と先進性を生かしながら、どの大学もなしえなかった新しい大学の在り方を創出していきます。
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