求められる八方美人
交代選手はチタン
チタンは、骨の交代選手と言えるでしょう。歯周病によって、歯を根っこごと抜いてしまった場合を想定します。その場合、替え歯の根っこにはチタンを使用します。その理由は、チタンが骨と同じような働きをするからです。
まず骨は頑丈です。ものを食べる時、歯を支える骨には想像以上の負担がかかります。骨はこうした負担に耐えることができます。そして、チタンは骨と同じくらい丈夫です。そのことは、高圧に耐えて空を飛ばなければならない飛行機の材料としてチタンが使われていることからもわかります。
またチタンは毒性が少ないので、骨と同じように体内に存在しても、生体に悪影響を与えません。これもチタンが骨の交代選手として使われる理由です。
仲間を装う
歯の根っことしてチタンを使用する際には、チタンの表面を何らかの物質でコーティングしたほうが良いでしょう。そうしなければ、うまく結合してくれないからです。
根がチタンの歯を埋め込む場合を想定します。その際、チタンでできた根はあごの骨と結合させなくてはなりません。ですが骨の成分であるハイドロキシアパタイトと、金属であるチタンは異質なものです。したがって、あごの骨はチタンの根との結合を拒もうとします。
この問題の解決策は、「仲間を装う」ことです。つまり、チタンの根の表面にハイドロキシアパタイトをコーティングすることで、あごの骨に仲間意識を持たせるのです。そうすると、あごの骨は仲間がやってきたと認識し、チタンの根の歯とうまく結合してくれます。
しかしコーティング材のハイドロキシアパタイトと、歯の根となるチタンとの相性はさほど良くありません。ですから中身のチタンとも仲の良いコーティング材が必要です。骨ともチタンとも仲良くできる八方美人的なコーティング材が求められているのです。
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