求められる八方美人

求められる八方美人

交代選手はチタン

チタンは、骨の交代選手と言えるでしょう。歯周病によって、歯を根っこごと抜いてしまった場合を想定します。その場合、替え歯の根っこにはチタンを使用します。その理由は、チタンが骨と同じような働きをするからです。
まず骨は頑丈です。ものを食べる時、歯を支える骨には想像以上の負担がかかります。骨はこうした負担に耐えることができます。そして、チタンは骨と同じくらい丈夫です。そのことは、高圧に耐えて空を飛ばなければならない飛行機の材料としてチタンが使われていることからもわかります。
またチタンは毒性が少ないので、骨と同じように体内に存在しても、生体に悪影響を与えません。これもチタンが骨の交代選手として使われる理由です。

仲間を装う

歯の根っことしてチタンを使用する際には、チタンの表面を何らかの物質でコーティングしたほうが良いでしょう。そうしなければ、うまく結合してくれないからです。
根がチタンの歯を埋め込む場合を想定します。その際、チタンでできた根はあごの骨と結合させなくてはなりません。ですが骨の成分であるハイドロキシアパタイトと、金属であるチタンは異質なものです。したがって、あごの骨はチタンの根との結合を拒もうとします。
この問題の解決策は、「仲間を装う」ことです。つまり、チタンの根の表面にハイドロキシアパタイトをコーティングすることで、あごの骨に仲間意識を持たせるのです。そうすると、あごの骨は仲間がやってきたと認識し、チタンの根の歯とうまく結合してくれます。
しかしコーティング材のハイドロキシアパタイトと、歯の根となるチタンとの相性はさほど良くありません。ですから中身のチタンとも仲の良いコーティング材が必要です。骨ともチタンとも仲良くできる八方美人的なコーティング材が求められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

北見工業大学 工学部 地球環境工学科 教授 大津 直史 先生

北見工業大学 工学部 地球環境工学科 教授 大津 直史 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

材料工学

メッセージ

研究=難しいと思っていませんか。しかし研究には、さほど高度な技術や知識は必要ありません。必要なものは、「なぜ」と「やってやろう」です。この現象がなぜ生じたのだろうと考えること。そして、その疑問を解決してやろうという気持ちがあれば、研究をすることができるのです。研究とは、決してハードルの高いものではありません。さあ、未知への探求へチャレンジしましょう。

北見工業大学に関心を持ったあなたは

「人を育て、科学技術を広め、地域に輝き、未来を拓く」北見工業大学では、高度化・複雑化している科学技術の急速な進展の中で、「個々の専門分野についての基盤的な技術、知識を有するだけではなく、学際領域や新しい分野の開拓にも柔軟に対応できる能力を持ち、自然と調和した科学技術の発展と国際社会への対応を念頭においた技術開発を行い得る人材を養成する」ことを使命としています。このことをもって、本学は地域社会の発展はもとより、国家・ 国際社会の安全と平和および文化の進展に貢献します。