おなかの音や耳垢も観察項目? 意識のない患者を看護する技術

おなかの音や耳垢も観察項目? 意識のない患者を看護する技術

意識のない患者の意思をどうくみ取るか?

病院には、脳梗塞・事故外傷・がん・老衰などで、意識のない状態の患者が入院しています。そのように言語表現ができない患者を看護する時に大切なのは、患者の容体や意思をどのようにくみ取るかです。その際にまず基本となるのがバイタルサインズと言われる観察項目で、血圧や脈拍、呼吸数、体温などです。しかし、胸に電極を装着する心電図モニターなどからも観察は行えます。患者がリラックスしていると、心拍数や呼吸の波形は大きくゆったりしていますが、ストレスを感じると波形や数は乱れます。聞こえていないと思って、そばで患者の病状にまつわる話をすると、実は聞こえているので波形が乱れたりします。ですから、常に患者を思いやる気持ちを忘れず、言葉を選ぶ行動が望まれます。

おなかの音や耳垢からも、患者の容体や意思を推察

しかし、装置に頼らなくても、よく観察することで患者の意思や容体を推測できます。例えば、おなかの音です。聴診器で胃腸からぐぅーっという音が聞こえた場合は、消化管の働きが順調で空腹を感じているかもしれないと推察できますし、不調なら栄養を吸収できないので、食事を摂る時間を空けるなどの調整をします。排便の状態をからも、やはり消化や体調の変化がわかります。また耳垢は、温熱刺激が過剰だと増える傾向があるので、いつもより多ければ患者が熱さを感じていたんだなと推測でき、掛け布団を薄くしたり、体温計測をこまめに行うようにするなどの配慮ができるのです。

すべての患者に尊敬の気持ちを

このような丁寧な観察は、医療職の中でも常に患者に接している看護師にしかできません。たとえ意識がない人でも、手を握ったり、体をさすったりして、そばで見守っていることを語り掛けることで患者は安心します。目は開いていなくても聴覚は機能していますから、「今日は調子が良さそうですね」と耳元で声を掛けることも必要でしょう。どのような状態の患者でも一人の人間として尊重し、尊厳を保てる看護をすることが求められているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名寄市立大学 保健福祉学部 看護学科 教授 長谷部 佳子 先生

名寄市立大学 保健福祉学部 看護学科 教授 長谷部 佳子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

臨床看護学、高齢者看護学、基礎看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本の看護は世界的に見てもきめ細やかで、チェックリストがなくても職人技のように一人一人が段取りを頭に入れていて、とてもクリエイティブな看護をしています。しかし、学問分野としての看護学はまだ発展途上だと個人的には感じます。これからの看護分野の発展には、データを根拠とした研究や実践を推進して真のサイエンス化が必要です。看護師をめざすなら、ぜひ生物・化学・数学などをしっかり勉強してきてください。基礎的なことを理解していると、薬や治療に対する理解がより進み、覚えやすさも違ってきます。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

名寄市立大学に関心を持ったあなたは

「ケアの未来をひらき、小さくてもきらりと光る大学をめざす」名寄市立大学では、保健医療福祉の連携と協働、少人数教育の実践、地域社会の教育的活用と地域貢献に、基づく教育・研究を進め、教養教育の充実を図りながら社会に貢献できる職業人の育成に努めています。
人口減少、少子高齢化が進む中、地域の活性化に少しでも貢献できるよう、本学の総合的専門職養成大学の特徴を生かした保健・医療・福祉・保育(子育て)・食育の観点から産学官の連携を図り、課題解決に向け取り組んでいます。