口で呼吸していると顔つきが変わる? 呼吸と噛み合わせの関係とは
呼吸と噛み合わせには、深い関係がある
噛み合わせに問題のある患者さんの中には、呼吸の仕方が原因となっているケースが多くみられます。人は通常、鼻で呼吸をしていますが、何らかの原因によって口で呼吸をすることが常態化すると、噛み合わせに影響が生じてしまうのです。口呼吸の原因としては、鼻が詰まっていたり、歯が出ていて口が閉じられなかったりなどがあげられます。
口呼吸をしていると、歯が出やすい!?
前歯の裏側に当たる舌の圧力を調べた実験データでは、鼻で呼吸するより口呼吸のほうが、座った状態ではおよそ4倍、あおむけの状態ではおよそ8倍の圧力がかかることがわかっています。
口呼吸をすると、どうして舌を突き出すようになるのでしょうか? 舌の動きは呼吸のリズムと連動していて、呼吸をするたび規則的な動きをしています。そのため、口だけで呼吸をしていると、呼吸をするたび、自然と舌を下の前歯に押しつけるようになってしまうのです。そして、歯と歯の間のスペースも開きがちになります。
口呼吸をしていると、顔つきにも影響が出る
口呼吸は口を閉じる筋肉の働きにどんな影響があるか、ネコを使って実験をしました。ネコが鼻で呼吸をできないようにします。そして、そのネコが口のみで呼吸をするようになると、咬筋(こうきん)という咀嚼(そしゃく)するための筋肉の働きが弱まったのです。このような状態が長く続くと顔つきも変わってくるかもしれません。
噛み合わせが悪い患者さんは、歯の矯正を行っても、口呼吸を放置したままだと、また歯が出てしまいます。つまり歯科矯正の治療は、歯ならびや噛み合わせの形態だけではなく、呼吸などの機能面もともなった治療をする必要があるのです。呼吸と噛み合わせの研究が進むことで、患者さんにとって効率よく、治療効果の高い歯科矯正ができることが期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京科学大学 医歯学系(旧・東京医科歯科大学) 歯学部 歯学科 教授 小野 卓史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
歯科矯正学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?