進化する歯科矯正 将来は薬を塗るだけで歯並びが治せる?
選択肢が増えた歯の矯正装置
出っ歯(前向きに生えた歯)や受け口(下の歯が前に出る噛み合わせ)、八重歯などを治し、きれいな歯並びをめざす「歯科矯正」の方法は、近年大きく変わってきています。変化の1つは、矯正装置の多様化です。矯正装置と言えば歯の表面を覆う銀色の針金をイメージする人も多いかもしれませんが、最近では目立ちにくい白い色のものや、歯の表側ではなく裏につけるタイプのもの、取り外しが可能なプラスチック製のマウスピースなど、さまざまなタイプが登場し、選択肢が増えてきました。
近年登場した、ねじを使う新しい治療法
歯科矯正における近年の最も大きな変化は、歯科矯正用アンカースクリューの登場です。歯科矯正用アンカースクリューとは、歯科用の小さなねじのことです。治療の期間だけこのねじを上顎や下顎に埋め込み、歯を動かす際の支点にして矯正を行います。以前の歯科矯正の際には、ヘッドギアーという帽子のような装置を取りつけることもありました。しかし、ヘッドギアーは患者自身が自宅などで使用する必要があるため、効果は患者の取り組み次第という不確定要素があったのです。そこで、ヘッドギアーに代わり、歯科矯正用アンカースクリューを使う新しい治療が用いられるようになりました。この方法は患者の取り組みに左右されず、また以前は難しかった方向への歯の移動も可能になるので、今までよりもよい治療結果が出るようになりました。
患者の負担を少なくする未来の歯科矯正とは?
ただしこの治療法にも、ねじを埋め込む際に外科的侵襲(手術などによる体の負担)をともなうというデメリットがあります。そこで現在研究されているのが、薬を塗って歯の動きをコントロールする新しい治療法です。この方法であれば装置を付ける必要はなく、外科的侵襲もありません。現在はマウスを使った実験段階で、実用化にはまだ時間がかかりそうですが、実現できれば、患者にとってより負担の少ない歯科矯正が可能になると期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
愛知学院大学 歯学部 歯学科 准教授 田渕 雅子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
歯科矯正学、歯学、医学、薬学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?