講義No.05357 歯学

歯を抜かずに治す最先端歯科治療

歯を抜かずに治す最先端歯科治療

抜歯の一番の原因は「割れ」

「いくつになっても自分自身の歯を残したい。」それは誰もが願うことでしょう。特に日本人は、インプラントや矯正が盛んなアメリカやヨーロッパの人々に比べ、歯を残すことを重んじる傾向があります。
現在、歯を抜く2大原因は「歯周病」と「虫歯」で、日本では年間約1千万本の歯が抜かれていると言われていますが、「歯周病」と「虫歯」はきちんと予防すれば歯を抜くようなことにはめったになりません。しかし、歯が割れてしまうことは自分では予防できません。歯根(歯の根っこ)まで割れてしまう「歯根の破折」では、今でも世界の99%の歯科医師が治療を断念して抜歯している状況で、わが国でも年に150万本以上が抜かれていると考えられています。そんな状況を変えたいと進められたのが、「割れた歯根を接着する」研究です。

ボンドで割れた歯をくっつける!?

歯を食いしばったりすると、歯にかかる力は前歯で15キロ、奥歯では60キロ程度と言われています。大変な負荷がかかっているのです。そのため、割れた歯をくっつける場合には、噛んでも再び割れないよう強固に接着する接着剤が必要となります。これには歯科用の接着剤として開発され、生体に優しい「スーパーボンド」を使います。

歯を抜かずに修復する技術も

また割れた歯を接着するといっても、歯の根っこは歯茎にくっついています。ではどうやって治療するのでしょうか。まず「割れた歯を1度抜いて、接着してから元に戻す」という画期的な治療法が開発されました。しかし抜く時に粉々に割れてしまう場合もあります。そこでさらに考えられたのが、歯を抜かずに接着剤で修復する方法です。手術用顕微鏡で見ながら、直径250ミクロンの金属チップを超音波振動させ、歯に入ったヒビを削り接着剤で修復します。
この治療技術が普及すれば、抜歯しなければならない症例は1~2割に減るでしょう。また今後は、破折した歯根の接着だけでなくその周囲の組織再生と予防が課題です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 歯学部  准教授 菅谷 勉 先生

北海道大学 歯学部 准教授 菅谷 勉 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

歯内療法学や歯周病学

先生が目指すSDGs

メッセージ

歯学部に入学する人たちの多くは、歯科医師になるのが目標でしょう。私もそうでした。臨床を行っていくなかで新しい治療法を実践したり、最先端の歯科医学に傾倒していく人もいるかもしれません。歯科医師として独立し開業するとしても、研究者として研究を続けるにしても、必要なのは歯科医療に興味をもつことです。歯学部はそのための学部であり、歯科医師を養成するための学問を教える場です。ですから、あなたも志望するなら、まずは歯科医療に関心をもちながら日々の勉強をしっかりとやってください。

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。