講義No.07083 薬学

自然界に眠る未知の薬を探す、生薬研究のロマンあふれる世界

自然界に眠る未知の薬を探す、生薬研究のロマンあふれる世界

薬学の原点である「生薬」の効能

人間は、近代医学が発展するよりもはるかに遠い昔から、植物などに由来する天然素材を生薬(しょうやく)として、病気の治療や体質改善に活用してきました。例えば、約2000年前に中国で著された『神農本草経』という書物では、薬効の強さに応じて3段階に分類された365種類の薬が紹介されています。そうした天然素材の化学成分で好ましい作用を持った物質をさらに改良したり、それらをモデルにまったく新しい化合物を合成したりすることによって、多くの優れた医薬品が開発されています。

植物が秘めていたマラリア治療薬のヒント

東南アジアの多くの地域で見られるマメ科の植物、タガヤサン(カッシア・シアメア)は、マラリアにかかった人がその樹皮を煎じて飲むと熱が下がると言われていて、現地の人々の間では有効な民間薬として知られていました。その成分を分析すると、それまで知られていなかった、強力な抗マラリア活性を持つ物質が見つかったのです。この新しい物質は「カッシアリン」と名付けられ、人工的な合成にも成功しています。これまで利用されていた「キニーネ」などの抗マラリア剤に耐性を持つマラリア原虫が増えてきている中で、カッシアリンには新たな治療薬としての期待が集まっています。

自然の中から新たな薬を見つけ出す

世界にはほかにも、植物などのさまざまな天然素材による生薬や伝承薬、そしていまだに利用されていない植物資源が無数に存在します。それらを研究・分析すれば、がんやエイズ、認知症など、社会的に問題になっている病気の治療に役立つ物質を発見できる可能性があります。また、生活習慣病の予防や改善に有効なハーブの薬効を解明すれば、新たなサプリメントの開発にも役立てることができます。
世の中でまだ誰も見つけたことのない物質を自然の中から発掘し、その正体と作用を解明する、「自然界に眠る未知の財宝を探究する」というロマンが、生薬の世界にはまだまだ存在しているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

星薬科大学 薬学部 生薬学教室 教授 森田 博史 先生

星薬科大学 薬学部 生薬学教室 教授 森田 博史 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生薬学、天然物化学、有機化学、薬理学

メッセージ

星薬科大学は、製薬会社をルーツとして約100年前に誕生しました。親切第一をモットーに、適切な薬を提供して健康を支えることを使命としています。薬のスペシャリストである薬剤師を養成する薬学科と、薬の可能性を追究する研究者を養成する創薬科学科の2つの学科があり、そうした道に進む環境を整えています。
学生と先生、大学院生、先輩との距離も非常に近いので、あなたの夢を実現する手助けになると思います。我々と一緒に、薬について勉強しましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

星薬科大学に関心を持ったあなたは

星薬科大学は東京・品川にキャンパスが位置し、日本の私立薬科大学(薬学部)のなかでも五指に入る伝統校です。『本学は世界に奉仕する人材育成の揺籃である』を建学の精神に掲げ、チーム医療の一員として活躍する優れた資質を有する薬剤師の養成と、次代の創薬を担う研究・開発者の育成を目標に、薬学科(6年制)と創薬科学科(4年制)の2つの学科を設置、独自の教育を展開することで、薬学の進化・発展に貢献するスペシャリストの育成をめざしています。