溶媒に溶けたタンパク質をどうやって取り出すか
生物が作るバイオ医薬品
バイオ医薬品は生物により作り出される分子を有効成分とする薬で、分子量が非常に大きいタンパク質は人工的な化学合成で作るのが難しいので、多くの場合は生物に作り出してもらっています。生物の細胞は増殖する際にタンパク質も増やします。近年ではより人間に近い哺乳類の細胞としてチャイニーズハムスターの細胞が多く使用され、その中で目的となるタンパク質をよりたくさん作る細胞を選ぶことで、医薬品になるタンパク質をたくさん作れるようになりました。
目的の物質を取り出す
しかし細胞で作ってもらったタンパク質は細胞そのものや、目的としないタンパク質、DNA、細胞を培養するために必要な成分などが混じり合っています。そこで、目的のタンパク質だけを取り出して、人に副作用を起こさないレベルまで目的タンパク質以外の物質の濃度を下げる研究が行われています。例えば抗体医薬品も、原料である抗体タンパク質の場合は、選択的に結合できるタンパク質が分かっています。このタンパク質が結合した微粒子と、細胞が作ったタンパク質溶液を混ぜると、微粒子に抗体タンパク質だけをくっつけることができます。微粒子と溶媒を効率よく分離するには単純にまぜるだけでなく、微粒子をあらかじめ詰めたガラスチューブを作り、そこにタンパク質溶液を通過させる方法などがあります。ガラスチューブに微粒子を詰めておくと、微粒子に結合した抗体タンパク質を回収することも簡単です。
実験室から工場へ
タンパク質が吸着するには一定の時間が必要なため、微粒子の材質と大きさ、チューブを通過させる溶液の速度のバランスが重要です。また、研究室レベルでは数ミリリットルという単位で実験を行いますが、実際の製薬工場では数トンの単位で製造しなくてはなりません。実験室からのスケールアップを行う際に、それに応じた流量で流せるポンプはあるのか、機械の強度は保てるのかを考える必要もあります。計算上では可能なことも、現実に置き換えたときに支障が出ないように、研究が進められています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
山口大学 工学部 応用化学科 准教授 吉本 則子 先生
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