細胞をコントロールするさまざまな薬とその副作用を知っておこう!
細胞増殖による病気
私たちの体は細胞でできています。細胞は増殖する力を持っており、悪い細胞が増殖すれば、がんのように人間を命の危険にさらすことがあります。また細菌も、細胞でできている生命です。細菌によって引き起こされる病気は、細菌の増殖を抑えることによって、症状を軽減したり、治したりすることができます。そのため、医薬品の多くには、細胞の増殖を制御するという働きがあります。
抗がん剤と抗生物質
病気の進行を抑えたり、症状を和らげたりするためには、さまざまな薬が使われますが、薬には副作用がつきものです。例えば、がん細胞をやっつける働きがある抗がん剤です。がん細胞とは、もともと人間の体内にある細胞ですから、基本的な仕組みは同じであり、抗がん剤は、がんではない細胞にも影響を及ぼします。抗がん剤は細胞の増殖を抑える作用があるため、特に細胞増殖の激しい部位である、髪の毛や爪、血球などが影響を受けやすいのです。
一方、細菌の細胞は人間の細胞とは異なるものなので、細菌をやっつけるための抗生物質が人間の細胞に大きくダメージを与えることはありません。しかし抗生物質は、病原菌だけでなく、人間の体に必要な腸内細菌をも攻撃してしまいます。ただ、細菌は増殖する力が強いので、抗生物質を飲むのをやめれば、腸内細菌はすぐに元のように腸内に増えていきます。
細胞の老化を防ぐ
薬学という分野では、病気に効く薬ばかりではなく、人間の健康に役立つさまざまなものが研究対象になります。例えば、肌や血管には、弾性繊維という伸び縮みするタンパク質が含まれています。年をとるとともにその弾性がなくなっていき、しわやたるみの原因になるということがわかっています。そこにどういう物質や刺激を与えると細胞の老化が防げるかという研究は、薬によって細胞をコントロールする研究とほぼ同じものです。こうした美容に関わるような研究も、薬学における大きな研究テーマの一つとなっています。
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先生情報 / 大学情報
星薬科大学 薬学部 薬学科 教授 輪千 浩史 先生
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