新薬の開発や病気の解明に関連する細胞膜上の「受容体」って何?
新薬開発につながるタンパク質
細胞膜上には「Gタンパク質共役受容体」というタンパク質が存在し、ホルモンや神経伝達物質と結合して細胞外からの指示をキャッチするセンサーのような働きをしています。ホルモンがGタンパク質共役受容体に結合することで「細胞に指示が来た」ということを理解し、細胞の中でさまざまな変化を起こすのです。そのため、ホルモン以外に受容体と結合する化合物があると、それらの化合物はホルモンの代わりに指示を出したり、ホルモンとの結合を邪魔して効果を遮断したりする働きをします。こうした仕組みの理解は新しい薬の開発にもつながるのです。
薬が効くメカニズムは受容体にあった
例えば、花粉症の薬として「抗ヒスタミン薬」というものがあります。花粉が体内に入ると、ヒスタミンが花粉を追い出すために「涙を出せ」や「鼻水を出せ」という指示を細胞に出します。薬は受容体に結合することでヒスタミンの働きを防ぎ、花粉症の症状を抑えることができます。このように、受容体に結合する物質は薬となることがあります。
新薬開発のために、効率的に化合物を探し出す取り組みが行われていますが、それだけではなく受容体の立体構造を決定して、受容体に合う化合物を計算することで薬を設計する取り組みもおこなわれています。
未知のタンパク質「オーファン受容体」
受容体には、ヒスタミンやアドレナリンなど、相手となる化合物が存在します。さらに、何の働きを持っているのか判明していない「オーファン受容体」と呼ばれる受容体もあるのです。ヒトの体内に100~200個存在するオーファン受容体に結合する化合物を探したり設計したりすることも新薬開発の研究の一つです。また、化合物が見つかることで、解明されていない病気や生命現象が明らかになる可能性もあります。
たくさんの化合物を受容体と組み合わせて反応を見ていく作業は地道なものです。そうした作業を続ける一方で、多くの研究者同士で情報を交換するなど、世界中で生命現象の解明と新しい薬の開発に向けた研究が進められています。
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群馬大学 理工学部 物質・環境類(応用化学プログラム) 教授 武田 茂樹 先生
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