有機物が電池の世界を変える!
とても身近な二次電池
電池には二つの種類があります。一つは、電気容量を使い切ると捨てるしかない「一次電池」です。もう一つは、リチウムイオン電池に代表される、繰り返し使用できる「二次電池」です。二次電池はノートパソコンやスマートフォン、ハイブリッドカーなどにも使用され、私たちの暮らしにはなくてはならないものになっています。しかし、スマートフォンなら半日から1日ほどしか一度の充電で使用できる電気容量はなく、再充電をするにも2~3時間はかかってしまいます。今、二次電池に求められているのは、「単位重量や単位体積あたりに貯められる電気容量の増加」、「高速充放電」、「軽さ」、そして「安全性」です。
モバイル機器の使いやすさも電池次第
実際、タブレット端末を分解すると、その大半の体積を電池が占めていることがわかります。つまり電池の性能が追いつかないために、モバイル機器の性能が制限されてしまっているのです。リチウムイオン電池のプラス極にはコバルトという元素の酸化物、マイナス極にはエンピツの芯に使われる黒鉛(グラファイト)が用いられています。コバルトは金属で重く、レアメタルと呼ばれる供給が難しい金属です。酸化物なので安全性にも疑問が残ります。
有機物こそ次世代二次電池の期待の星!
現在、大学や化学メーカーおよび自動車メーカーによる共同研究で、コバルト酸化物の役割を有機物に担わせた二次電池の開発が進められています。上手に設計すると、小さな有機分子でも多くの電子を受け取ったり、逆に放出することができるような性質を組み込むことができます。安定な充放電を実現するための二次電池の設計と合成には多くの困難が予想されていましたが、これまでのところ市販のリチウムイオン電池の約1.5倍の電気容量を持つ有機二次電池が実現されています。有機物は安全性も高く、使用後も紙などと一緒に燃やすことが可能です。今はまだ実験室レベルですが、いずれは有機二次電池が産業構造を変えると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
愛知工業大学 工学部 応用化学科 教授 森田 靖 先生
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