ミクロの世界を見る! 持続可能な社会に貢献するマテリアル工学
材料をミクロのレベルで研究する
私たちの暮らしを支える科学技術の発展には、さまざまなモノをつくるための材料の開発が欠かせません。新しい材料を研究開発したり、その特性を調べたりする学問を「マテリアル工学」と言いますが、近年では、材料の原子配列までを可視化して調べるというレベルに進んでいます。
原子配列を見るには、透過型電子顕微鏡(TEM)が使われています。電子を原子に当てたときの散乱や干渉という現象を応用して、原子の状態を像として捉えるものです。TEMの倍率は1千万倍で、子どもの背丈が地球と同じくらいの大きさに見えるイメージです。
全固体電池の材料研究
このようなミクロの状態を可視化して行う研究の一つに、全固体電池の材料開発があります。全固体電池は電気自動車などの大型蓄電池に使われる技術で、電気のもととなるイオンを通す電解質が固体でできているものです。電解質に液体が使われている従来のリチウムイオン電池は、発火するなどの危険性があるため、より安全な電池が求められています。
全固体電池では電極も電解質もすべて固体の粉末が使われています。細かくすることで粒同士の接触面(界面)を大きくし、イオンを通りやすくするのです。この界面の状態によって電池の性能が大きく変わるため、界面がどういう状態になっているかをTEMで調べる研究が進んでいます。
ガラス結晶粉末の粒同士のくっつき方
全固体電池にはガラス結晶の10⁻⁶メートル(ナノメートル)というレベルの細かい粒が使われますが、この粒が隙間なく触れ合っていることが、イオンの伝導の性能に関わります。また、その触れ合っている面の結晶の原子配列状態によっても変わってきます。界面状態を見ることによって、どのような材料が適しているか、また、どのようにそうした材料を製造すればいいかが見えてくるのです。
高性能な全固体電池材料の研究は、電池の用途の拡大をもたらし、エネルギー問題の解決にもつながると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 工学部 マテリアル工学科 教授 森 茂生 先生
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先生への質問
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