「触媒」が価値観を変える、世界を変える
「触媒」が果たしてきた歴史的役割
触媒とは、資源となる物質に対し、化学反応を進める物質のことです。例えば、石油からガソリンを作る際にも触媒は使われます。触媒の歴史は長く、古くから金属にメッキを施す冶金(やきん)技術などがありました。近代になって、“化学”の学問の発展とともに、化学反応によりいろいろなものを人工的に作れることがわかりました。そして、社会のさまざまな分野を支えるようになりました。
例えば、1900年代初頭、鉄と酸化アルミニウムを触媒として、窒素ガスからアンモニアが作られ、肥料の大量生産が可能になりました。これが人口増加の障害となる食料生産の問題を解決したのです。この合成技術は現在も触媒研究の基礎となっており、ノーベル化学賞を受賞しています。
肉眼では見えない効率性を探究する
触媒は、目に見えない原子や分子のレベルで化学反応を起こします。反応をより効率的に進めるため、水熱化学を利用し、いわば圧力釜のような状態の中で、きれいに整った結晶構造の触媒を作る技術もあります。また、バイオマスを資源にして、触媒反応によって水素を作るといった研究も行われています。
では、どうやって触媒による化学反応を検証するかというと、元素どうしのつながりを磁気で測定する方法や、化学物質そのものを測定する方法があります。いずれも精密な機器を使いますが、これにより、想定した反応がうまく進んだかどうかが検証されます。
これからも世界を変える触媒革命
石油からプラスチックが作られなかったら、世界はまったく別の進化を遂げていたでしょう。効率的にガソリンを作る触媒技術が開発されたおかげで、石油資源の寿命が伸びています。また、化学肥料がなければ、世界の人口は数億人までしか増えなかったとも考えられています。
つまり触媒は、新しい価値を生み、世の中を大きく変える力を持っている分野といえます。地球上にある資源を触媒で効果的に変え、有用で安価な物質を生み出すことができれば、見たことのない世界が開けていく可能性もあるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
高知大学 理工学部 化学生命理工学科 講師 恩田 歩武 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
触媒化学、水熱化学、バイオマス化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?