触媒でゴミ削減! 地球に優しい化学反応
ゴミとなる化学反応の試薬
医薬品や化粧品、香料、化学繊維、有機ELなど、私たちの身近にある多くのものは有機分子から作られています。原料となる小さい有機分子に化学反応を繰り返すことで目的の化合物を作りますが、化学反応を起こすために試薬が使われます。試薬は使ったあと、ゴミになります。
そこで注目されているのが、「触媒技術」を利用した地球に優しい化学合成法です。試薬の代わりに、触媒によって化学反応を促進させます。触媒は、一度だけでなく何回も化学反応を促進させることができます。「グリーンケミストリー」と呼ばれる環境に優しい化学の指針に沿った触媒技術は、SDGsの達成にも大きく貢献できます。
触媒は創薬にも貢献できる
例えば、創薬に使われる化合物にアミドとペプチドがあります。アミドは、4割以上の低分子医薬品の化学構造に含まれています。またペプチドは、副作用が大きい低分子医薬品と、高額な抗体医薬品の双方の課題を解決する「中分子医薬品」として注目されています。
アミドの合成では、2つの原料を反応させるための試薬が使われますが、この試薬も使い終わったあとはゴミになります。そこで、アミドを合成するための触媒を探索した結果、ボロン酸という化合物を使い独自にデザインした分子が触媒として有効であることがわかりました。同様に、ペプチドを合成するための触媒を作ることができれば、創薬に大きく貢献できます。
触媒のデザインが新技術へ
アミドを合成するための触媒は水の影響を大きく受けるため、化学反応を促進するには水を除去する作業が必要でした。しかし、独自に開発した触媒は、水を除去する操作をしなくても、最高で7,500回も化学反応を促進することができました。水を除去するための装置や添加物も不要になるのです。
今後、触媒技術はますます発展していくでしょう。21世紀のノーベル化学賞の多くは触媒技術の開発に関連するものです。自由な発想でデザインされた触媒は、地球に優しい新技術につながります。
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先生情報 / 大学情報
日本大学 文理学部 化学科 准教授 嶋田 修之 先生
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