骨が伝えるメッセージ! ~犬の親指が消えた理由?~
骨からわかる進化の過程
骨は私たちにいろいろなことを語りかけてくれます。ある動物の骨を見て、さらにほかの動物と比較をして、初めてわかってくることもあります。例えば、足の先の骨を見ると、動物は人間と違い、かかとをつけず、つま先で立っていることがわかります。つま先で立つと足の親指が地面から浮きます。犬の骨を見ると後足の親指の骨はほぼ退化していますが、犬の祖先にあたるオオカミにはまだ親指があります。それは、オオカミが岩場を走るときに親指を使うためだと考えられています。逆に犬は親指を使わないので退化したのです。このような進化の過程は骨を見て、ほかの動物と比べることでわかるものなのです。
動物の骨を比較してみよう!
動物の足の指の数を比べると、興味深いことがわかります。つま先立ちの4本から3本、2本、1本とさらに少ない動物がいるのです。例えば馬は1本です。実は地面につく部分が少ないほど速く走れるのは力学的に証明されています。馬の足の指は速く走るために1本だけ使われるようになったのです。
ところで、猫やチーターといったネコ科の動物も走るのは速いですが、足の指は4本あります。これには別の骨の構造が関係しています。ネコ科の動物の背骨は一つひとつがとても柔らかく隙間があります。骨同士の間に隙間があると動きが滑らかになります。猫が走るときに、背中を丸めているのを見たことがあるでしょう。それは背骨の隙間を縮めて全身をバネにしてスピードを出しているのです。これも骨格からわかることなのです。
骨の理解を看護に生かす
このように、動物の骨は私たちに多くのことを教えてくれますが、それは、具体的には何の役に立つのでしょうか?
例えば、骨格の成り立ち、構造の意味を理解することで、できるだけ動物に負担を掛けない看護を行うことが可能となります。動物看護の現場では、骨からのさまざまなメッセージを理解することが求められるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 動物看護学科 教授 今村 伸一郎 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
比較動物学、比較解剖学、動物看護学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?