天然記念物のウサギが農家の悩みに? 動物と共生する農業の研究

天然記念物のウサギが農家の悩みに? 動物と共生する農業の研究

天然記念物が農家を困らせている?

鹿児島県の奄美大島と徳之島には、国の天然記念物に指定されているアマミノクロウサギが生息しています。マングースやノネコに襲われて数が減ったアマミノクロウサギですが、保護活動の成果で個体数が回復しつつあります。すると、今度はアマミノクロウサギが農作物に被害を及ぼす、という新たな課題が生じました。しかしアマミノクロウサギは天然記念物なので、傷つけずに追い払わなければなりません。

動物を傷つけない柵を作る

対策のひとつが金網柵の設置です。しかし、通常の柵では網目が大きく、アマミノクロウサギが通り抜けてしまいます。調査の結果、網目のサイズは4cm四方に決まりました。小さすぎると思うかもしれませんが、これにはアマミノクロウサギの行動が反映されています。すき間に引っかかったアマミノクロウサギは、後退しての脱出ができないことがわかったからです。頭は入るけれど身体が通り抜けられない、といった中途半端なサイズの網目では、脱出できずに動けなくなったアマミノクロウサギがケガをするかもしれません。動物を傷つけずに農地への侵入を防ぐために、頭も入らないほどの小さな網目が採用されました。

人と動物が共生した農業をめざして

動物の身体能力や行動の特性を踏まえて作られた柵を農地や道路の周辺に設置すれば、農作物の被害を防ぐだけでなく、アマミノクロウサギの交通事故被害も防ぐことが可能です。人と動物がお互いに大切にしたい生活圏をきちんと「すみ分け」れば、限られたスペースで共生できるかもしれません。
また、動物の中には農業の助けになる行動をとる種類もいます。ヤギやアイガモのように草や虫を食べてくれる動物を飼いながら農業をすれば、散布する農薬などを減らすことができます。動物を害獣としてすべて排除するのではなく、共生するための方法や、動物と協力して農作物を作り環境負荷を減らす「環境共生型農業」の仕組みを確立させようと、研究が続いています。

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先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 動物行動学 准教授 髙山 耕二 先生

鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 動物行動学 准教授 髙山 耕二 先生

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メッセージ

食と農は、生活に欠かせない身近なテーマです。農業はハードルが高いというイメージがあるかもしれませんが、挑戦してみると「自分にもできるんだ」と実感できるでしょう。本格的な農業でなくても、ちょっとしたスペースを使って植物を育てたり野菜を作ったりすることは、誰でも可能です。また、農業と関係が深い動物と触れ合ってみるのもいい勉強になると思います。食と農について深く知りたいと感じたら、ぜひ私と一緒に学びましょう。大学で植物や動物、環境などを学び、日本の食と農の新しい形を作ってもらいたいです。

先生への質問

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鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。