生物の進化も見える、「歯」のロマンあふれる世界とは
歯科分野の解剖学
解剖学はギリシャ時代から始まり、1500年代にはすでに教科書も出ている学問です。歯科で必要とされる解剖学というと頭部や口の中だけと思われがちですが、全身の構造を知らずに「歯」の治療はできません。高齢化が進むなか、食物や唾液が誤って気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こす患者さんや、複数の疾病を持つ患者さんが増加しているので、そのような患者さんに対応するためにも、全身を総合的に学ぶ必要があるのです。
歯の進化を知る
歯は動物の進化の指標の一つとしてとらえることができます。魚類から確認でき、両生類、は虫類、ほ乳類にも存在しますが、鳥類では失われています。恐竜の「イグアノドン」などという学名の「ドン」は歯の意味で、実際に歯の化石は多数発掘されます。歯を顎に留める構造も変化していて、歯がその根と顎の骨の間にある歯根膜(靭帯様構造)で留められているのが、ほ乳類の一つの特徴です。
歯の中には象牙質やエナメル質、セメント質などがありますが、定義では、象牙質を持つものが「歯」です。表面のエナメル質を作る細胞は、その外側にあるので、歯ができると消えています。しかし象牙質の中には歯髄という組織があり、そこに存在する細胞により象牙質は生き続けます。
歯の形態や遺伝子を観察し再生医療へ
歯の形態や発生の研究で重要なのは、できるだけ新鮮な状態で標本を作り観察することです。標本には、ラットの歯や、全ゲノム解析が終わってDNA配列がわかっているメダカの歯を主に使い、遺伝子の発現を比較したり、抗原抗体反応を利用して、さらに抗体に着色することで、それが結合するタンパク質が歯のどこに存在するのかを探したりもします。
最近では、歯周組織の再生医療が注目を浴びています。その中では、人工歯根を顎(あご)の骨に埋め込む「インプラント治療」の課題の一つである、かみしめる力の強弱を感知して歯を守る神経系を有する歯根膜(靭帯様構造)を再生する研究も行われるようになってきています。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 歯学部 歯学科 教授 馬場 麻人 先生
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