口から全身の健康を支援する「口腔保健学」という学問
始まったばかりの「口腔保健学」
歯科の領域における新しい学問分野に「口腔(こうくう)保健学」があります。口腔保健学とは、「口腔」すなわち「口」から全身の健康を支援する学問です。
例えば、「虫歯」は「食べる」という大切な機能に支障を起こしかねない感染症です。虫歯を防ぐ歯磨き粉の成分や磨き方については、これまでさまざまな研究がなされてきました。しかし、その研究成果を実際の人間の生活に具体化し、人々の行動の変化にまでつなげなければ、虫歯を予防することはできません。虫歯予防には毎日の生活習慣こそが重要だからです。その方法を研究し、実践する学問が口腔保健学なのです。
すべてのライフステージに課題がある
虫歯予防は子どもから高齢者まで、すべてのライフステージに共通しますが、ステージごとに特有の課題もあります。
高齢者の場合には、加齢による嚥下(えんげ:飲み込む)機能の低下があります。嚥下機能が衰えると、誤嚥(食べ物が気管に入ること)を起こしやすくなり、それがもとで肺炎の発症につながってしまいます。肺炎は、日本人の死因の第4位ですから、嚥下機能を維持する研究と実践は、とても重要な意味を持っています。
重要になってきている「歯科衛生士」の役割
こうした重要な役割を持つ口腔保健学の主な担い手が、「歯科衛生士」です。歯科衛生士は、ライフステージのあらゆる場面で活動し、人々が健康のために有効な生活習慣を身につけるよう支援することが期待されているのです。
そのとき、歯科衛生士は、保健師、保育士、保健教諭、歯科医師、看護師、介護士などと、しっかりと連携することが求められます。他職種との連携のあり方を探究するのも、口腔保健学のテーマで、こうした連携を進め、人々に健康のための行動を促すためにも、コミュニケーションの能力が必要です。どのようなコミュニケーションが必要かという心理学的なアプローチも、口腔保健学の重要な課題なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 口腔保健科学専攻 准教授 新井 恵 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
口腔保健学、歯科衛生学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?