口内の健康を守ることが全身の健康につながる!
むし歯菌はどこから来るのか
むし歯菌は、むし歯を引き起こすだけではなく、全身の病気の原因にもなり得ます。その一例が感染性心内膜炎です。心室中隔欠損症など先天的な心疾患のある人には心臓内に一種の引っかかりのようなものがあり、血管内に入り込んでしまったむし歯菌が増殖して炎症を引き起こすことがあります。
病気の原因となるのは10人に1~2人が保有しているコラーゲン結合タンパクを持ったむし歯菌であることが分かってきました。どんな人でも、歯が生えてくるまでむし歯菌は持っていませんが、歯の本数が増えるに従い、養育者から伝播する形でむし歯菌が口内に入ってきて定着するのです。
歯周病菌が血液に入る?
歯周病も同様に、全身の病気と関係があります。糖尿病の悪化に影響するケースや、妊婦の場合は早産や低体重児出産のリスクがあるとも言われています。歯周病菌が血管内に入ることでさまざまな病気を引き起こすのです。歯周病菌は酸素があるところでは生きられないため、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)のほとんどない子どもの口内では定着しません。その後、歯周ポケットが深くなりはじめた思春期頃から、パートナーの唾液を通じて入ってきたものがポケット深くに定着しはじめます。血管内は酸素が豊富なため歯周病菌は生きられないのですが、歯周病菌の出す物質や菌の死骸が病気の原因になるのです。
健康づくりはまず口内から
10人に1~2人が保有しているコラーゲン結合タンパクを持ったむし歯菌は、脳出血の一因にもなっていることも分かってきました。さらに、難病に指定されている潰瘍性大腸炎や IgA腎症など、メカニズムが詳しく解明されていない病気との関係性が明らかになってきました。
口内への注目が高まるにつれ、歯科や口腔外科のない病院にも歯科を作ろうという動きが出ています。人々の健康増進のために、口内環境のコントロールと改善の重要度はさらに増していくことでしょう。そして、それに貢献できるのが歯学の分野ということです。
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大阪大学 歯学部 小児歯科学講座 教授 仲野 和彦 先生
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