がん細胞と免疫細胞の攻防を実況中継! 光遺伝学で医療が変わる
生体の細胞を観察
内部が透けて見えるアナログ時計では、歯車が絶え間なく動いて時を刻む様子が手に取るようにわかります。同じように、生きている体内で細胞が動く様子の一部が見えるようになりました。2008年にノーベル賞を受賞した技術である「蛍光タンパク質(GFP)」を細胞内に入れて観察すると、細胞の動きが見えるようになります。発生したがん細胞に対して免疫細胞がどのように攻撃するか、実況中継ができるほど詳細にわかるのです。
深層部まで見える
観察を可能にしたのは「2光子顕微鏡」という顕微鏡の技術発展もあります。今までは表層部しか見られませんでしたが、2光子顕微鏡ではその200倍の深層部分まで観察できるのです。光学を活用して、可視光外の波長を使って奥まで見えるようにしています。これにより、生きている動物の脳内の神経細胞や、ほかの体内の細胞の動きが見えるようになりました。
がん細胞ができる様子や、免疫機構であるNK細胞によってどのように破壊されるのかも観察できます。その戦いは、がん細胞対NK細胞が1対1のときも1対3のときもあることがわかりました。
光遺伝学でNK細胞を活性化
がん細胞は、人間の体内で毎日できています。NK細胞が、がん細胞を退治できる率は50%ほどです。それを100%に近づけられれば、がんの発症率が下がります。そのNK細胞の「やる気スイッチ」を入れるには、光遺伝学を活用します。これは、光を照射することで分子を活性化させて、細胞の機能を操作する技術です。夏の花であるアサガオは、光が当たることで情報が伝わって花が開きます。それと同じようなことを細胞内で起こすのです。
このように、生きている体内で起きている細胞や分子、DNAの動きをリアルタイムで観察・操作することで、実態がわかるようになります。さらに、光遺伝学によって分子の活性・不活性を制御できるようになれば、医療がガラリと変わる可能性もあります。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 医学科 顕微解剖学分野 教授 寺井 健太 先生
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