歯科矯正の最新事情に迫る
矯正の歴史はまだ100年余り
歯科矯正の歴史は、アメリカに端を発しています。始祖と言われるエドワード・アングル博士が、歯科矯正の理論を発表したのは20世紀初頭のことです。それ以前は、まだ歯列の乱れは審美的な問題と考えられていました。アングル博士は、かみ合わせ(咬合)という概念を初めて提唱し、歯科矯正の基礎理論を生み出した人なのです。そして現在では、さまざまなアプローチで歯科矯正の研究が進められています。
民族によって異なる骨格と歯並び
上あごと下あごの位置は、個人によってそれぞれ異なります。そこで、顔の骨格にあるさまざまな計測ポイントを数値化することで、男女の各年齢における平均的な骨格を割り出すことができます。これを患者さんの骨格と比較することで、どういった治療を行うべきかを検討します。また、白人や黄色人種など、民族の違いによっても骨格には大きな特徴が現れます。その骨格の違いが歯並びに大きな影響をおよぼすことから、不正咬合も遺伝によるものではないかと考えられ、今では遺伝子レベルでの研究が進められているところです。
課題は高齢者の歯科矯正
北海道大学病院では現在、18歳以上で矯正治療を始めようと考えている人は、45%に達しています。しかし、1970ごろには、たったの5%しかいませんでした。なかでも30歳以上で歯科矯正を考える人は、1970年ごろにはゼロだったのです。ところが、現在では11%に達し、さらに50歳以上の人も3%を超えています。このように、50歳以上の人たちでも歯科矯正を求めるようになってきたため、今後、高齢者にどういった治療を施すべきかが現在の研究テーマとなっています。これまでの矯正治療は、子どものころから始めるものとされていました。そのため、高齢者に対する治療について、研究があまり行われてこなかったのです。確かに、歯を支える役割を果たす歯根膜(しこんまく)の機能は、年を経るにつれ少しずつ低下していきます。しかし、60歳以上でも矯正治療は十分可能であることがわかっています。
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