黎明期の光をとらえろ! 赤外線観測で宇宙初期の姿を探る
宇宙の膨張とともに光の波長も伸びる
この宇宙は「ビッグバン」と呼ばれる大爆発で始まり、その爆発の勢いのまま膨張を続けていると考えられています。宇宙の初期にできた天体が発した光は、宇宙空間の膨張に伴って、その波長が長くなります。天体が放つのは主に可視光や波長の短い紫外線ですが、それが地球に届くときには波長の長い赤外線になっているのです。そこで、赤外線を観測し、宇宙の初期の姿を探る研究が行われています。超遠方にある個々の天体から届く赤外線は非常に弱く、それだけをとらえることは不可能なので、それらをまとめて天空に広がる「宇宙背景放射」として観測します。
ロケットで大気圏外から観測
地球の大気は赤外線を吸収・反射して夜も輝いているため、地上の望遠鏡では宇宙の微弱な赤外線を観測できません。そこで、望遠鏡を乗せた観測ロケットを打ち上げ、大気圏外から観測します。ただ、赤外線は近くにある星からも放射されているので、スペクトルや光の強度のむらの違いから、近くの赤外線を除外してデータ解析する必要があります。
これまでの観測結果から、宇宙背景放射は理論上の予測よりも明るいことがわかってきました。この観測結果が正しければ、まだ私たちの知らない天体が宇宙の始まりの頃に存在して、その光が見えている可能性があります。
将来の目標は深宇宙からの観測
ロケットで観測できる時間は15分程度と短いため、宇宙背景放射の光のむらを観測する可視光の望遠カメラを搭載した超小型人工衛星の打ち上げも予定されています。そして将来的には、さらに遠い宇宙へ探査機を飛ばすことも目標とされています。地球の周辺にはちりが多く、太陽光を反射して観測の妨げになっていますが、小惑星帯を越えるとちりはなくなり、より精度の高い観測ができるのです。その準備として、2020年にリュウグウのサンプルを地球に届けて新たな目的地へと旅立ったはやぶさ2が、小惑星への旅を続けながら、現在もちりの観測を行っています。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 理学部 物理・宇宙学科 教授 松浦 周二 先生
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先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?