RNAの研究で、治療が難しかった病気が治る日も近い!?
高度な生命現象をRNAが担っている
ヒトゲノムが解読されて明らかになったことの一つとして、タンパク質をコードする領域(タンパク質となる遺伝情報を持っている領域)が3%にも満たなかったことが挙げられます。これは、研究者の予想を大きく下回り、私たちを驚かせました。さらに研究が進むと、残りの97%のタンパク質をコードしていない領域からノンコーディングRNA (ncRNA)と呼ばれる機能性のRNA(リボ核酸)がたくさんつくられていることが明らかとなりました。このncRNAは高等生物に多く存在することから、高度な生命現象の仕組みはncRNAが担っていると考えられています。
RNAは治療薬として使われている
近年では、RNAは治療薬としても使われています。「加齢黄斑変性症」という失明につながる目の病気があるのですが、RNAアプタマーと呼ばれるRNAを投与することによって、この病気を治すことができます。RNAアプタマーは病気の原因となっているタンパク質に強くくっつくことによって、そのタンパク質の働きを抑え、病気を治すことができるのです。RNAアプタマーは、「進化分子工学的手法」によってつくられます。この「進化分子工学的手法」では、いろいろな病気に対するRNA治療薬をつくることが可能だと考えられています。
将来はがんやエイズなど治療薬としても応用
がんの一種である「急性骨髄性白血病」の場合を見ていきましょう。この病気は、がんの原因となる異常タンパク質がつくられ、この異常タンパク質がDNAにくっつくことによって遺伝子発現が正常に行われなくなると、発症します。この異常タンパク質をRNAアプタマーにくっつけてしまい、DNAにくっつかないようにすれば、症状を抑えることができるのです。
今後はがんだけでなく、エイズなどの病気でも、RNA治療薬が開発されることが予想されます。治療が難しかった病気が、RNAの研究によって克服される日もそう遠くないかもしれません。
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