「会話」ができ、「歌える」人間の能力は、実はすごいんです!
人間は「会話」で長い歴史を生きてきた
あなたは声を出す時、舌の動かし方や口の形を意識したことがありますか? 通常は意識しないことも多いでしょう。しかし、何気ない一言を発する時でも、私たちは舌や口を動かし、声道(音声として発せられる前に響きが作られる口の中の空洞)を複雑に変形させることで声を出しています。そして、その声の1つ1つをつなげて意味のある「ことば」を作り出します。
私たちはこのように「ことば」を使って会話をしています。人間は進化の過程で、ほかの動物には見られない、人間独自の音声コミュニケーション能力を発達させてきました。そして、それによりお互いの意思疎通や生きる上で必要な情報をやりとりし、人類の長い歴史を生き抜いてきました。
人間の声は「二重構造」
人間の声は、ほかの動物の鳴き声や楽器の音などとは違い、二重構造になっています。例えばトランペットの演奏では、メロディを奏でることはできても歌詞を表現することはできません。しかし人間の声の場合、歌うことでメロディと歌詞の両方を同時に表現することができます。これは人間が歌う時に、「喉の振動」と「口の形」の二重構造によって、メロディの周波数変化と歌詞による発音の変化を、同時に別々に制御することが可能だからです。喉の振動は主にメロディの変化と、口の形は主に歌詞による発音の変化と関係しています。
人を助ける「声」の技術
ディジタル技術の発達により、人間の声はコンピュータで合成し出力することが可能となりました。その技術は、医療や福祉の現場でも活用され始めています。例えば、声を失った人でも、過去に録音された自分の声を保存しておけば、それを基に再び自分の声で会話をすることもできるようになります。さらに、音が聞こえない人に声を届ける人工内耳や補聴器といった医療機器にもディジタル技術は応用されています。自分の母語はもちろんのこと、外国語を話したり聞き取る際にも、ディジタル技術による支援が得られるようになりつつあります。
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上智大学 理工学部 情報理工学科 教授 荒井 隆行 先生
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