声と言葉で世界をつなぐ力を育てる

声と言葉が育む共感力
「声や言葉による表現」は、ただ上手に話したり演じたりするためのものではありません。人と人との心をつなぎ、社会の土台となる「共感力」を育てるのに欠かせない力です。この表現には、空気の振動を感じ取りながら響かせる繊細な技術があります。例えば、同じ「おはよう」という言葉でも、声の調子や表情によって伝わる印象は全く違います。場面や相手の立場を想像する力を養い、場に合った声と言葉を届けて心を通わせる素地を築くのです。
古くからの言葉を未来へつなぐ
声や言葉は、時代を超えて人々をつないできました。例えば奄美大島に伝わる島唄には「かなしゃ」という言葉があり、「愛おしい」という意味で使われています。これは平安時代の「愛し(かなし)」に通じる使い方であり、古代の言葉が今も息づいている例です。各地に残る古い言葉は、何百年も前から大切に受け継がれ、今も形を変えながら未来に引き継がれています。そうした中で、俳句や短歌の創作を通して、日本語のリズムや季節感を体感する取り組みも進められてきました。「五・七・五」の音のリズムに合わせて表現する中で、言葉の感性や響きを磨き、新しい時代にふさわしい声と言葉の表現を育てています。
求められる声の力
AIの発達により、誰でも簡単に文章や音声を作れる時代になりました。しかし、人間の声や言葉には、AIにはない特別な力があります。例えば、AIが作る音声は本物そっくりの「食品サンプル」のようなもので、見た目はきれいでも、実際に体をつくることはできません。一方、人間の言葉は「本物の料理」のように、心を育て、感情を動かします。また、声や言葉による表現には、感情や時間の流れ、場面の空気感まで届ける力があります。これからの社会では、テクノロジーを使いこなす力とともに、人間らしい共感力や表現力もますます求められます。声と言葉とを磨き、豊かな感性で未来へ発信していく力が、デジタル時代における新しい声と言葉のあり方なのです。
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先生情報 / 大学情報

昭和音楽大学音楽学部 音楽芸術表現学科 声とことばの創造表現コース 准教授えぐさ ゆうこ 先生
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