コンピュータシミュレーションで鉄道の安全を守る
大地震から新幹線を守るシミュレーション
大地震が起きた時、新幹線は、どういう動きをするのか? それを確認するために、実際に時速300kmで新幹線を走行させ、地震を起こす実験はできません。そこで重要になるのが、コンピュータを使った力学的なシミュレーションです。列車の走行スピードやレールの状態、加わる地震の力など、走行中の車両に働く力の種類や大きさを変えながらコンピュータ解析することで、大地震の際にどんなことが起こるかを探ることができます。もちろん、鉄道会社は、出されたシミュレーションの結果を鵜呑みにするのではなく、実験装置を用い、シミュレーションがどれくらい現実に近い状態を作り出せているのかを検証しながら、シミュレーションの精度を高めていきます。
メンテナンスが鉄道の安全性を担保してきた
このように、コンピュータでの解析と実験での検証が鉄道の安全性を担保するわけですが、列車の動きの解析にコンピュータが導入されるようになったのは、比較的最近のことです。それ以前、レールの傷や車両の不具合などの問題が生じた時は、もちろん解析も行われましたが、すべての原因を究明できたわけではないため、鉄道会社では、メンテナンスにコストと労力をかけることで、安全性を確保してきました。しかし、コンピュータ解析で不具合の原因を究明し、予防策が打ち出せるようになれば、メンテナンスの費用負担を軽減することができます。そうなれば、コストを抑えながら安全性を確保することもできるのです。
鉄道で途上国のインフラ構築に貢献
日本の鉄道システムは、世界でも屈指の安全性と快適性を誇りますが、これをより低コストで実現できれば、鉄道網の整備を進めている発展途上国への鉄道システムの輸出も可能になります。途上国で鉄道が整備されれば、人や物の移動が活発になるため、経済の発展につながります。しかも、鉄道は、航空機や自動車に比べ環境負荷も小さいため、環境と経済を両立することもできるのです。
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先生情報 / 大学情報
上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教授 曄道 佳明 先生
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