これからの道路ネットワークに求められるものとは?

これからの道路ネットワークに求められるものとは?

1本の道路ができるまで

道路の幅員(ふくいん:道路や橋の横の長さ)や構造は、さまざまな要素から決定されます。その際重要なのは、道路ネットワークの中での役割であり、都市と地方のどちらを通るのか、交通を流すための通行機能と家や店からのアクセス機能のどちらを重視するのかなどが考慮されます。そこから交通需要予測なども踏まえ、車線数や中央分離帯・歩道の有無などが決められます。しかし交通量の予測は難しく、実情と合わずに渋滞を生み出してしまうこともあります。

交通需要はなぜ予測しにくいのか

交通需要は幾つかのモデルを複合的に組み合わせ、それをコンピュータ上で計算して予測します。モデルを作る際にはもちろん、モニタリング調査なども行います。しかし、渋滞はある時間帯に自動車が集中する需要のアンバランスにより発生するため、本来は時間軸も含めた調査結果を入力しなければならないのですが、そこまでの調査を行い予測計算に反映させるのは難しいのです。また人口の増減や経済成長、それにともなう開発などの予測も盛り込まなければなりませんが、10~20年後の社会情勢を何となく予測はできても、細かく予測するのは難しいのです。そういう意味では、例えば高度経済成長期は何もかもが右肩上がりで予測しやすかったのですが、今や社会情勢自体の先が読みづらく、交通需要も予測しにくくなっているのです。

求められるのは「先手」の施策

ひと昔前までは必要に応じて道路を造る、後手の対策で問題ありませんでした。しかし今や必要性や予測に従い道路を造るのではなく、あらかじめ、まず施策を考え、その施策実現のために道路や交通システムを造ることが求められています。つまり「世の中がこうなるから道路をこうしよう」ではなく、「世の中をこうするために道路をこうしよう」という発想です。経済成長の維持だけでなく、地球温暖化やCO₂削減、防災なども見据え、都市の構造をどうすべきか、それを支える交通システムはどうあるべきかを考える必要があるのです。

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東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 小根山 裕之 先生

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 教授 小根山 裕之 先生

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交通工学

メッセージ

誰もが将来「こんな研究がしたい」「こんな仕事がしたい」というイメージがあるでしょう。それに向かって突き進むのもいいですが、一見自分の守備範囲外だと思っても、ちょっとでも興味のある分野に出会ったら、どんどんチャレンジしてください。若い頃の視界は限られており、「本当に面白いこと、重要なこと」は見えていないかもしれないからです。新しいことを知った結果、最初のイメージが変わってしまうことも珍しくありませんが、恐れずに新しい世界へと踏み出し、充実した人生を送ってください。

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