講義No.12246 社会学

「不平等」はどんな国の雇用にも存在する

「不平等」はどんな国の雇用にも存在する

日本的雇用とは

経営者と労働者の関係は、国ごとに異なります。日本的雇用の場合、長労働時間、残業ありきの給与体系、異動に対して基本的に文句を言えない、言わないといった特徴があります。また、性別の違いによる昇進の格差、正社員と非正規雇用者の待遇格差は、大きな社会問題です。そこで最近は、働き方を見直そうという声が高まっています。

「同一労働同一賃金」が日本で難しい理由

給料の格差をなくす合言葉として使われ始めたのが、「同一労働同一賃金」です。文字通り受け取れば、「同じ内容の仕事の人は賃金も同じにする」ということですが、これは「仕事」を「職業」と捉えるヨーロッパ諸国の文脈でこそ成立します。言い換えれば、ヨーロッパにも職業別の賃金という格差は存在し、不平等があると言えます。多くの人がその不平等は受け入れていますが、正規雇用であろうと非正規雇用であろうと、同じ仕事をしている人の間に不平等があるのは問題視されやすいのです。一方、日本では「仕事」が「組織内の役割や責任」と理解される傾向が強く、、賃金格差は職業ではなく企業別に存在します。企業組織の枠や正規・非正規の違いがあると、役割や責任が違うという理由で、同じような仕事をしている人の間の不平等が問題視されにくい状態になっています。

なぜ仕事を説明するとき企業名を言うのか

企業中心の考え方、一種の等級付けは、日本人の中に深く根付いています。だから就職の際は福利厚生の整った、ステータスが高いとされる企業を志望します。また、ほかの人に自己紹介や仕事内容を説明するときは、まず勤め先の企業名を言ったりします。こうした「常識」の構造そのものを変えない限り、本当の意味で不平等をなくすのは難しいでしょう。ただし、社員の希望を一部聞き入れるなど、個人が働きたい形に対応している企業も増えています。家事や家族のケアのために、外で働くことすらできなかった女性が数多くいた時代に比べれば、若干状況は良くなっていると言えるかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 総合人間科学部 社会学科 教授 今井 順 先生

上智大学 総合人間科学部 社会学科 教授 今井 順 先生

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労働社会学、比較社会学、社会学

先生が目指すSDGs

メッセージ

誰もが社会との関わりの中で生きていて、社会は今の自分の成り立ちに影響を与えています。自分がどんな人間なのかを知るのに、社会学は役立つことでしょう。また社会の仕組みを考える習慣を付けておくと、将来の役に立つ可能性もあります。今後、世の中はどんどん変わっていくはずです。その変化に適応し、あるいは自ら仕組みを変えるには、社会の問題点を認識しておかなければなりません。大事なのは知識を取り入れることはもちろん、学んだことについて自分で考え、人に述べられるようになることです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。