「不平等」はどんな国の雇用にも存在する
日本的雇用とは
経営者と労働者の関係は、国ごとに異なります。日本的雇用の場合、長労働時間、残業ありきの給与体系、異動に対して基本的に文句を言えない、言わないといった特徴があります。また、性別の違いによる昇進の格差、正社員と非正規雇用者の待遇格差は、大きな社会問題です。そこで最近は、働き方を見直そうという声が高まっています。
「同一労働同一賃金」が日本で難しい理由
給料の格差をなくす合言葉として使われ始めたのが、「同一労働同一賃金」です。文字通り受け取れば、「同じ内容の仕事の人は賃金も同じにする」ということですが、これは「仕事」を「職業」と捉えるヨーロッパ諸国の文脈でこそ成立します。言い換えれば、ヨーロッパにも職業別の賃金という格差は存在し、不平等があると言えます。多くの人がその不平等は受け入れていますが、正規雇用であろうと非正規雇用であろうと、同じ仕事をしている人の間に不平等があるのは問題視されやすいのです。一方、日本では「仕事」が「組織内の役割や責任」と理解される傾向が強く、、賃金格差は職業ではなく企業別に存在します。企業組織の枠や正規・非正規の違いがあると、役割や責任が違うという理由で、同じような仕事をしている人の間の不平等が問題視されにくい状態になっています。
なぜ仕事を説明するとき企業名を言うのか
企業中心の考え方、一種の等級付けは、日本人の中に深く根付いています。だから就職の際は福利厚生の整った、ステータスが高いとされる企業を志望します。また、ほかの人に自己紹介や仕事内容を説明するときは、まず勤め先の企業名を言ったりします。こうした「常識」の構造そのものを変えない限り、本当の意味で不平等をなくすのは難しいでしょう。ただし、社員の希望を一部聞き入れるなど、個人が働きたい形に対応している企業も増えています。家事や家族のケアのために、外で働くことすらできなかった女性が数多くいた時代に比べれば、若干状況は良くなっていると言えるかもしれません。
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上智大学 総合人間科学部 社会学科 教授 今井 順 先生
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