カメラとAIが動きや力の加減を自動的に判断する「サイボーグ義手」
思い通りに動かせない筋電型ロボット義手
事故や病気で腕を失った人にとって、「義手」は不便さを補ってくれる重要な存在です。近年はロボット工学の発展により、繊細な動きが可能な義手も開発されています。ただ、それらロボット義手は、筋肉が発する微弱な電気信号(筋電)で操作するため、思い通りに動かせないことも珍しくありません。筋電のパターンは個人差や年齢差が大きいので、例えば目の前にあるマグカップを握ろうとしても、指が少ししか開かなかったり、握る力が強すぎて柔らかい物を潰してしまったりするのです。そこで、義手に「頭脳」を持たせる「サイボーグ義手」の研究がスタートしました。
義手に装着した「目」が、持ち上げる物体を認識
カメラ映像をAIにディープラーニングさせ、それが何なのかを見分けられるようにする、「物体認識」の技術が急速に進歩しています。サイボーグ義手もこの技術を活用し、義手に装着した小型カメラの映像から、指をどのように開くべきか、どれくらいの強さで握るべきかなどを判断します。最先端のAIは、すでに数千種類の物体を見分けられ、その精度は年々高まっています。あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT技術で、義手とAIとをつなげば、やがて本物の手と同じくらい的確に動かせる義手が実現するでしょう。
融合する現実世界とコンピュータ内部の世界
「サイバーフィジカルシステム」という言葉を知っていますか。現実の世界(フィジカル空間)のあらゆる事柄を、各種センサーなどを用いてデジタルデータ化し、IoTによってコンピュータの世界(サイバー空間)に転送し、送られてきたデータをAIが解析し、フィジカル空間にフィードバックするシステムです。サイボーグ義手は、まさにこのシステムを応用したものです。このようなシステムは、医療・福祉関連ばかりでなく、防災などの社会問題や産業課題の解決などにも役立つ技術として研究が進められています。
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佐賀大学 理工学部 理工学科 数理・情報部門 教授 福田 修 先生
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