今年のトマトはどう? 機械学習で作物の生育を予測
スマート農業発展のために
農業にIoT(インターネットにつながった)機器やロボットなどを導入するスマート農業は、日本でも関心を集めているテーマです。例えばハウス栽培では、気温や湿度などをセンサで測り、窓の開閉、酸素濃度の調整といった作業を機械が自動で行います。ただし、農業に関するデータは年々集まっているものの、活用方法の幅はあまり広がっていません。せっかくデータがあっても、生産現場で農作業の効率化(コスト削減)、品質向上、高収量化にまだまだ活用できていないのです。そこでAI(機械学習)を応用し、農作物の収量の予測や生育状態を分析する研究が行われています。
機械学習でデータを分析
トマトは、温度管理、病気対策や栽培途中の作業が多く、高収量で安定栽培するのが難しい野菜です。「今年はトマトがたくさん収穫できるのだろうか」という疑問には、気温や日射量などのデータを機械学習で分析しモデル化することで、ある程度答えることができます。ただし精度の高いモデルを作るためには、データを与える人間が一手間加えなければなりません。機械学習では、データの中から機械自身が法則性を発見しますが、データの質が低いと、意図通りのモデルができません。そのため気温を与えるときは、数週間分の気温(日平均気温)を合計したデータを与えます。トマトの収量は、毎日の気温よりも一定期間積み重ねた気温に左右されるからです。ほかにも「収穫前の実の状態は」など、農業者の方から話を聞き、現場での観察をデータ化して機械学習させることも重要です。
農家の手助けとなる予測
「この条件を満たせばこれだけの収量を得られる」というモデルがあれば、農業への新規参入がしやすくなると考えられます。その年の収量がわかれば、現役の農業者の方も収穫作業に必要になる人員を前もって用意することが可能です。さらに研究が進み個々の畑や田んぼに合わせた予測ができるようになれば、農家の収益アップ、作物の品質や収量の向上につながると期待されています。
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岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 ソフトウェア情報学科 社会システムデザインコース 講師 南野 謙一 先生
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