宇宙誕生のカギは素粒子にあり! 謎に包まれた素粒子の正体とは
物質を分割していくと素粒子になる
「素粒子」とは、物質を構成する基本的な粒子のことです。電子やニュートリノ、クォークといった物質を構成するものや、素粒子に質量を与えるヒッグス粒子、力を伝えるフォトンなどの種類があります。素粒子を説明する際にもとになるのが、「標準理論」という考え方です。標準理論の中では、電子とニュートリノが同じ粒子であると考えることができ、複数のクォークも同じものとして扱われます。「対称性がある」ために区別がつかなくなっているのですが、実際には対称性がなくなり、各素粒子はそれぞれ別の粒子として存在しています。
宇宙の始まりと「対称性」の関係とは
机の上に立てた細長い棒をイメージしてください。この時、机の上は棒を中心軸とする回転対称性を持ち、特定の方向を持っていませんが、棒が倒れた瞬間に特別な向きが生まれ回転対称ではなくなります。このように、何らかのきっかけによって対称性がなくなる現象を、「自発的対称性の破れ」といいます。
標準理論の対称性をさらに拡大したのが、「大統一理論」です。この理論の中では、電子、ニュートリノ、クォークの区別がなくなり、物質を構成する素粒子はすべて同じであると見なすことができます。大統一理論は、原子さえ誕生していないビッグバン直後の宇宙を説明するために必要不可欠なものなのです。
万物を統一する「超弦理論」
大統一理論には、1つの問題点があります。実は、重力や万有引力の影響が考えられておらず、この理論だけでは初期の宇宙を完全に説明することができないのです。そこで新たに提唱されたのが、「超弦理論」というものです。素粒子が点ではなく、ひものような状態であると仮定すれば、重力や万有引力まで対称性を広げることができ、大統一理論が抱える諸問題も解決するのではないかと考えられています。とはいえ、超弦理論の全体像はまだまだわかっておらず、現在もさまざまなアプローチから理論の基礎となる方程式が追究されているのです。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 理学部 数物科学科 教授 高橋 智彦 先生
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