人にやさしい「人間情報学」が開く未来
「心」を知ることの重要性
私たちの日常生活を支える要素技術の一つに、人と機械の関わりを考える「ヒューマンインタフェース(HI)」があります。誰もが使いやすく適切に応答するスマートなシステムを実現するためには、単にモノ作り技術に精通するだけでなく、人間の五感や思考がどういうものなのかや、デザインの原理を理解するための学際融合的な研究が重要です。
例えば、外界からの刺激に対する感覚や思考を情報処理の観点から考えるには認知心理学、それらに人間が反応する仕組みを調べるには医学や生理学、脳科学といった専門分野がありますが、これらの知見を生かし、目的に応じた学際的で自由なモノ作り研究に取り組めるのがHIの醍醐味です。
日常生活の質(QOL)を上げる
一方、HIの技術を生かし、生活と密着した新たなモノ作り分野として立ち上がりつつあるのが「生活工学」です。例えば、2006年頃、センサと繊維を融合させたスマートテキスタイルを用いて、妊婦と胎児の心拍を測定できるIoT腹帯が開発され、医師が遠隔診療で見守れるデバイスとして、特許申請も行われました。また、介護施設で認知症の患者さんの食事やトイレ、運動などの回数を、においと振動で測り自動記録するシステムもあります。これは多忙な介助者でもケアプランを立てやすく、効率的なワークフローを実現できるように開発されました。さらに、異なるアプローチとして、紫外線計測アクセサリもあります。例えば、ヘアバンドに取り付けたセンサで計測した紫外線のマップをスマホに表示し、クラウドを通じて日焼けしない観光ルートを共有できます。
必要になる文理融合的な発想
このようなHIや生活工学の考え方を生かし、少子高齢化や地方創生、SDGsといった喫緊の課題解決と社会実装技術を研究するには、理系だけでなく文系的な発想や知識も必要となります。こうした研究領域を広くまとめて、「人間情報学」といいます。安心・安全・快適な未来を開く大きな可能性を秘めていることが魅力です。
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先生情報 / 大学情報
奈良女子大学 工学部 工学科 教授 才脇 直樹 先生
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