自閉症のある乳幼児をどう支援する?

自閉症のある乳幼児をどう支援する?

乳幼児と保育士をサポート

自閉スペクトラム症(自閉症)などをもつ乳幼児期の子どもたちが通う療育施設があります。さまざまな症状のある子どもたちを少人数のグループに分け、保育などを行います。少人数だからこそ、それぞれの子どもの行動の特徴に合わせたサポートができますが、障がいのない子どもへの保育で求められる専門性とは違った視点も要求されます。自閉症をもつ子どもたちにどのように関わることが有効なのかについて研究が行われています。

自閉症と対人関係

自閉症のある子どもとない子どもの行動を比較調査し、自閉症の特性が検討されました。その結果個人差はあるものの、自閉症のある子どもは愛着行動を示すことが少ない傾向があることがわかりました。また、他者の行動に注意を向けにくい、他者からの声かけのような外部からの刺激に気づきにくいといった特徴も見られました。そのため他者と愛着を形成するまでに少し時間がかかるのです。しかし、一度関係を築くことができれば、その後は積極的に他者と関わっていくことが可能です。愛着を抱く対象が増えると対人関係が広がり、「この人と一緒なら苦手なことにも参加できる」と行動そのものが変化していく点は、自閉症があってもなくても変わりません。

楽しいと思えるコミュニケーション

自閉症のある人は誰もが対人関係を避けているとイメージされがちですが、実際には症状の個人差が大きく、さまざまな距離感で他者と接する事例が見られます。好きなことに没頭し他者の存在に気づきにくい子どもや、初対面の人にすぐに近寄って抱っこを要求する子どもなど、一人ひとりの症状に向き合いながら対人関係のきっかけ作りをすることが重要です。
適切な接し方を一般化することは困難ですが、研究によって、「人と関わることは楽しい」と思ってもらえるようなコミュニケーションが重要だとわかってきました。子どもが興味関心を持っている活動を一緒に行う、好んでいるおもちゃを使いながら話しかけるなど、保育士が実践できる効果的な方法が検討されています。

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先生情報 / 大学情報

奈良女子大学 文学部 人間科学科 心理学コース 准教授 狗巻 修司 先生

奈良女子大学 文学部 人間科学科 心理学コース 准教授 狗巻 修司 先生

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発達心理学、障害者・障害児心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

留学をすると「自分が考えていた当たり前が実はそうではなかった」と実感する人が多くいます。しかし国内でも、これまで触れてこなかった世界に積極的に関わっていけば、偏見に気がつきや価値観がくつがえるはずです。
私自身も、自閉スペクトラム症のある子どもたちと接するうちに、自分がどれだけ偏見を持っていたのかを痛感しました。あなたが普段生活している世界は一部分でしかなく、知らない世界のほうが広いでしょう。あなたのまわりの世界が少しでも広がると、持っている常識も変わっていくと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

奈良女子大学に関心を持ったあなたは

世界に誇れる文化と歴史に包まれた静かな環境の中で、奈良女子大学は、時代や社会の要請に応え、女性の高等教育機関として、高度な学術研究に基づく教育環境を提供し、自立して社会で活躍できる女性人材を養成しています。