宇宙から日常生活まで 手のひらサイズのシステムが開く未来

小さなボディに秘めた大きな可能性
「組み込みシステム」とは、特定の機能を実行するために電子回路とプログラムを組み合わせたものです。機器や設備に組み込んで利用されるため、そう呼ばれています。技術の進歩によって小型化が進んでおり、AIを搭載してかなり高度な処理が行えるものでも、手のひらサイズに収まるようになっています。AIの研究では通常、大きなコンピュータでより高性能な処理をめざします。一方、組み込みシステムでは、メモリの制約が厳しい環境でシステムをシンプルに設計し、必要最小限のリソースで目的を達成する工夫が求められます。
小型AIローバーで惑星探査に挑む
組み込みシステムの応用例に、月や火星などの惑星の地面を移動しながら探査する小型車両ロボット「惑星探査ローバー」があります。打ち上げ時のコスト削減のためにできるだけ小型軽量であることが望ましく、宇宙という極限環境で機能するため、省電力で、遠隔制御に頼らない完全自律型のシステムが求められます。最新型の惑星探査ローバーは、指2本分のサイズのコンピュータと、同程度のサイズのAIデバイスで動作します。この大きさでAIによる画像認識や自律走行を実現し、目標物を認識して移動したり、宇宙環境をカメラで撮影したりするのです。
砂漠から宇宙へ、そして日常へ
飲料缶サイズの惑星探査ローバー「CanSat」の世界大会が、毎年アメリカの砂漠で開かれています。この大会では、CanSatを小型ロケットで打ち上げ、目標物まで自律的に戻って来させ、その精度を競うのです。CanSatはGPSやAI画像認識を活用して目標物を見つけ、自力で進んで来ます。こうした技術は、私たちの身近な生活にも応用できます。例えば、家庭の風呂の汚れを認識して自動掃除するロボットや、倉庫内の物品管理や配送支援、さらには災害時の探索ロボットなど、さまざまな用途が見込まれています。小さくても賢いロボットたちが、未来の社会で重要な役割を担うかもしれません。
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