原子核を衝突させ、バラバラのクォークを取り出せ!
単独では存在できない素粒子
物質を細かく分解していくと、分子、原子、原子核と電子、陽子や中性子、クォークと、どんどん小さい粒子に分けることができます。最も小さく分けた素粒子とされているクォークは、「単独で取り出すことができない」という性質を持っています。例えば3個のかたまりとしては存在するのですが、そこから1つずつのクォークに分けることができないのです。それを、どうにか単独で取り出そうという実験が、長年続けられています。
粒子加速器という装置を使用し、光速に近いスピードで原子核同士をぶつけ、2兆度という超高温の状態にすれば、クォークがバラバラになると考えられています。現在、2兆度という条件は実現できており、単独ではありませんが、さらさらなスープのような状態のクォークたちを発生させることに成功しています。
ビッグバン直後、10万分の1秒
実は、クォークがバラバラで存在するという状態は、宇宙の誕生した瞬間、ビックバン直後にはあったはずだと考えられています。ビッグバンから10万分の1秒後以内という超高温の空間で、クォークは自由に飛び回り、それが次第に冷えてかたまりとなることで、今の宇宙の姿が作られていったのではないかということです。つまり、バラバラのクォークを調べることは、ビッグバン直後の宇宙がどんな状態だったのかを知ることにもつながるということです。
宇宙に「重さ」が誕生した瞬間
さらに、クォークは3個集まって陽子や中性子を作るのですが、クォーク3個の重さよりも、陽子や中性子は100倍も重いということがわかっています。ビッグバン直後のクォークが飛び回っている状態にはほぼ重さがなく、クォークがかたまりという形で閉じ込められた瞬間に重さ(質量)というものが誕生したと考えられています。逆に言えば、クォークのかたまりをバラバラにすれば、重さがほとんどなくなる、ということになります。つまり、バラバラのクォークをとらえることは、重さの誕生した瞬間を知ることでもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 物理学科 教授 志垣 賢太 先生
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