企業と働く人々の、21世紀型制度づくり
20世紀の経済社会を振り返る
これまでの経済社会では、大企業は、大衆にライフスタイルを提案し、大量消費社会を主導することで成長してきました。経済社会のメインプレイヤーは、多額の資金を調達し、大規模な生産・販売ができる大企業だったと言えます。
現行の会計や租税の制度は、このような大企業中心の経済社会を前提に設計されています。企業が効率的に資金を調達する仕組み(ファイナンス)や、企業の会計(経営成績の情報開示など)に関する制度が整備され、税制においても、多くの人が同じように働き消費する、画一化された社会に適合する制度でした。
これからの企業経営の方向性
今、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったテクノロジーの発展を背景に、第四次産業革命が始まり、企業のあり方も人々の働き方も大きく変わろうとしています。企業は、消費者のデータをもとに、個々の消費者に合わせた商品を生産し、安価に供給することができるようになります。企業にとって重要となるのは、従来のような資本力ではなく、消費者のデータを適時に収集できる仕組みであり、その前提としての消費者との信頼関係の構築であると言えます。
新たな企業のための制度をつくる
21世紀の経済社会では、消費者のデータ、消費者からの信頼やブランド力といった、目には見えにくいものが企業にとって重要な利益の源泉になります。さらに、キャッシュレス社会やインターネット上のプラットフォームを通じたデジタル化された商品(例えばスマホで購入できる音楽やゲーム、電子書籍)の取引が普及するなど、企業活動も見えにくくなり、かつグローバル化しています。そこで、例えばインターネット上で店舗を展開する外国企業が日本の消費者から(日本の消費者のデータを用いて)利益を得たときに、日本がその外国企業に適切に課税できるルールを整備する必要があるでしょう。
このように企業を取り巻く環境が世界規模で急速に変化する中で、会計や租税についても新たなルールや制度づくりが急がれています。
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先生情報 / 大学情報
成蹊大学 経営学部 総合経営学科 教授 伊藤 公哉 先生
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