「アーキテクチャ」に着目した戦略
アーキテクチャとは
企業が自社の製品開発戦略を考えるときに、「アーキテクチャ」という概念が役立ちます。アーキテクチャは製品の機能や構造に関する設計思想で、大きく「モジュラー型」と「インテグラル型」の2つに分けられます。モジュラー型は機能と構造が限りなく1対1に近い対応関係になっています。パソコンに代表されるように、部品・モジュール間のインターフェースが標準化しており、それらの部品を組み合わせることで完成することができることから、「組み合わせ型」とも呼ばれます。インテグラル型は、機能と構造の対応が交錯した関係であり、「すり合わせ型」とも呼ばれます。自動車のように、「乗り心地」という機能を追求するために、エンジン、サスペンション等の部品設計において微調整しながら最適設計する必要があります。
自社と顧客の関係性
例えば自動車の完成車メーカーと部品メーカーの取引関係において、部品メーカーにとっての自社の製品と、顧客(完成車メーカー)の製品のアーキテクチャの位置づけは、経営効率に大きく影響します。顧客の製品も自社製品もインテグラル型の場合は、それぞれの顧客の要望に合わせて、自社製品を顧客ごとにカスタマイズする必要があります。そのためコストが高くなり、利益が少なくなってしまいます。それに対して、自社製品がどの顧客の製品にも対応できるモジュラー型であれば、顧客のためのカスタマイズが不要となるため、経営効率が高まり利益もアップします。
経営効率を高めるために
自社製品を可能な限りモジュラー化するための企業努力も活発です。ある部品メーカーは自社製品の開発を「標準品」「標準品を用いたカスタム品」「フルカスタム品」の3つに分けて、できるだけカスタムせずに済むような開発体制を敷いています。また、商談時に技術者が同席して技術提案をしたり、顧客の要望を吸い上げたりするなど、開発以外のさまざまな工夫によっても経営効率が高まる場合もあります。これらの実態を把握し分析する研究は、技術経営におけるテーマの1つです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。