パスタの「アルデンテ」は、具体的にはどういう状態なのか?
金属分析の方法を応用して、食品を調べる
自動車を作る際、どういう金属が適しているのかといった視点で金属の分析が行われます。この「材料の特性を調べる」という方法はほかの分野にも応用でき、例えば同様にパスタの特性も分析できます。
金属における圧縮試験のように、麺を噛んだ状態を模擬的に作り、歯にかかる抵抗値を調べるのです。そうしてパスタの硬さやしなり具合、水分量の分布などをデータ化すると、いわゆる「アルデンテ」とは芯が何%残った状態なのかをはっきりと数値で示すことができます。
同じ材料で作っても物理的特性は違う!
パスタの物理的特性を最も左右するのはゆで時間ですが、製造方法も影響を与えています。例えばスパゲティなどは小麦粉の塊を多数の穴の開いた金型(ダイス)から押し出して細長い麺状にしていますが、金型のどの位置の穴から出てくるかで麺の流速が異なり、麺の特性も変わります。厳密に言うと、麺それぞれで密度が異なり、ゆでたときの歯ごたえも変わるのです。現実的には密度がバラバラでも口の中で平均化されるのですが、すべてが同じ密度の麺を金型を加工して作ることができれば、より食感に優れた麺になるかもしれません。
食品の特性を調べる意義は?
食品には、金属にはない分析の難しさもあります。食品は金属より変数が多く、性質の原因となる事柄を特定するのが難しいのです。例えば金属の場合、材料の断面方向で特性が変わることはまずありませんが、食品はパスタにおけるアルデンテのように表面と中心部の硬さが異なることがあります。それでも食品の特性を調べることは大きな意義があります。
これまで食品はグルテンが何%といった化学分析が中心で、物理的特性はほとんど調べられていませんでした。しかも製造工程や調理においても、「湿度が低いから水分は多めにしよう」といった、作り手の経験や勘に頼っていた部分が大きいのです。そこにきちんとした評価指標を与えることができれば、新たな食品材料が開発できる可能性が見えてきます。
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成蹊大学 理工学部 理工学科 教授 酒井 孝 先生
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