私たちの生活と密接に関わる、統計学の思考方法とは
社会をさまざまな場面で支えている「統計学」
あることについてのデータを基に、その背後にある事柄を推論するのが「統計学」と呼ばれる学問です。統計学は、私たちの身の回りのさまざまな分野で用いられ、社会を支える役割を果たしています。
限られたデータからできるだけ正確に推論する
統計学でよく用いられる「仮説検定」は、1930年代に基本的な考え方が確立した古典的な分析方法です。例えば、工場で生産される製品の不良品検査について考えてみましょう。この場合、「機械は正常である」ということを検証すべき仮説に設定します。検査で不良品が見つかった場合、その個数によって「機械は正常である」という仮説が正しいかどうかを見極める境目を適切に設定することが重要になります。また、例えば、医薬品メーカーによる新薬の開発では、「この薬は効かない」という仮説を設定します。新薬の検査で集めたデータによって、「効かない」という仮説を否定し、効能があることを証明するのです。もちろん、不良品検査をするなら生産するすべての製品を検査するのが理想的ですし、新薬を開発するならすべての人に対して検査をするのが理想的です。しかし、現実にはそういったことは不可能な場合がほとんどです。サンプル調査など限られたデータからできるだけ正確な推論をして責任を果たせるようにするのが、統計学の役割なのです。
「無罪である」という仮説を否定できるか?
少し異なる分野では、裁判においても、仮説検定と同じ考え方が用いられています。「推定無罪」という言葉をよく聞きますが、裁判では一般的に、「被告人は無罪である」という仮説を立て、その事件にまつわるさまざまな証拠を精査して、「無罪である」という仮説が否定できるかどうかを検討します。その仮説を否定しきれなければ、たとえどんなに怪しいと思われる要素が残っても、その被告人は無罪と判断されます。このように、統計学は私たちにとって、非常に身近な学問なのです。
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