私たちの生活と密接に関わる、統計学の思考方法とは

私たちの生活と密接に関わる、統計学の思考方法とは

社会をさまざまな場面で支えている「統計学」

あることについてのデータを基に、その背後にある事柄を推論するのが「統計学」と呼ばれる学問です。統計学は、私たちの身の回りのさまざまな分野で用いられ、社会を支える役割を果たしています。

限られたデータからできるだけ正確に推論する

統計学でよく用いられる「仮説検定」は、1930年代に基本的な考え方が確立した古典的な分析方法です。例えば、工場で生産される製品の不良品検査について考えてみましょう。この場合、「機械は正常である」ということを検証すべき仮説に設定します。検査で不良品が見つかった場合、その個数によって「機械は正常である」という仮説が正しいかどうかを見極める境目を適切に設定することが重要になります。また、例えば、医薬品メーカーによる新薬の開発では、「この薬は効かない」という仮説を設定します。新薬の検査で集めたデータによって、「効かない」という仮説を否定し、効能があることを証明するのです。もちろん、不良品検査をするなら生産するすべての製品を検査するのが理想的ですし、新薬を開発するならすべての人に対して検査をするのが理想的です。しかし、現実にはそういったことは不可能な場合がほとんどです。サンプル調査など限られたデータからできるだけ正確な推論をして責任を果たせるようにするのが、統計学の役割なのです。

「無罪である」という仮説を否定できるか?

少し異なる分野では、裁判においても、仮説検定と同じ考え方が用いられています。「推定無罪」という言葉をよく聞きますが、裁判では一般的に、「被告人は無罪である」という仮説を立て、その事件にまつわるさまざまな証拠を精査して、「無罪である」という仮説が否定できるかどうかを検討します。その仮説を否定しきれなければ、たとえどんなに怪しいと思われる要素が残っても、その被告人は無罪と判断されます。このように、統計学は私たちにとって、非常に身近な学問なのです。

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東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 森 治憲 先生

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 森 治憲 先生

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統計学

メッセージ

大学への進学をめざしている高校生のあなたは、入試に必要な科目の勉強に集中していると思います。大学に入学することが先決ですから、それは正しいことですが、大学に合格したら、専門科目から離れた分野まで視野を広げてほしいです。例えば、理系の学生さんなら、政治や文学などにも興味を持ってみましょう。文系の学生さんならやはり数学です。私が教えている統計学もそうですが、文系の学部でも数学が必要なことを忘れないでください。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。