スーパーへ、市場へ、アジアの農産物流通のそれぞれ
農産物の流通は変わっていくか
野菜など農産物の流通形態は、技術の進歩や近代化にともなって変化してきました。バザールなどと呼ばれる伝統的な市場で直接消費者に売る形式から、卸売市場に集められた農産物を小売店などが購入する形へ、そして現代では、スーパーマーケットなどの大型店舗が農家と契約して、市場を通さずに取引される形へと変化してきています。
野菜を仲介する商人の存在
多くの国では、スーパーの進出にともない、伝統的市場などは衰退していく傾向にあります。しかしインドネシアの農産物流通においては、スーパーの進出拡大は現在頭打ちになっており、いまだに地元の市場で野菜を購入する人が多いとされています。インドネシアでは、仲買の商人が農家と契約して野菜の収穫と輸送を担うという伝統的な形態があります。この取引形態が近代化の中で変化しつつも生き残り、インドネシアの農業に大きな役割を果たしているという現状が、現地調査によって明らかになってきています。
流通の形は、国や地域によっても変わります。例えば中国では「eコマース(ネットショッピングなどの電子商取引)」の普及が急速に進んだため、ほとんどの商取引はeコマースへ移行すると思われていましたが、実際にはそこまでは進行していません。
各国が協力してめざす発展可能性
このように「流通の近代化」は、大規模な資本を投じて一元的に流通システムを整えるだけではなく、地域や文化の特性に合わせた発展の可能性があることがわかります。
日本においては、国内で開発された生産や流通のノウハウを東南アジアなどに広めていこうという動きがありますが、日本のやり方が必ずしもほかの国に適しているとは限りません。むしろ、海外での事例を日本で役立てるというケースも出てくるでしょう。アジアの国々が協力して相互に技術移転を行うことができれば、流通の一連の流れに価値を付加できます。つまり、農業の「バリューチェーン(価値連鎖)」の構築が実現できるということです。
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