あなたが社長なら、ライバル会社に自社情報を開示しますか?
ライバル会社に情報開示すると
あなたが会社の社長なら、ライバル会社に、自社の情報を開示しますか? 自社とライバル会社の2社がいる市場で、自社情報を開示するとどんな影響が出るかを、数理モデルで理論的に示した研究があります。
ふつうに考えると、自社の重要な情報をライバル会社に知られてしまい、それを利用されてしまうとなれば、こちらとしては損をしそうなので、開示したくないという結論になりそうです。実際、ある条件のもとでは、情報を開示しないという結果が理論的に導かれます。
ライバル会社はどう反応するか
一方で、ライバル会社に情報を開示することで得をするような状況、つまり、会社が自ら進んで情報を開示するインセンティブ(動機)をもつような状況も存在します。
たとえば、A社のおこなう情報開示を通じて、「我が社(A社)は製品を増産するぞ」という積極的な戦略をとることが、A社と似た製品を作っているライバル会社であるB社に伝わるとしましょう。もしこのとき、B社が、市場での競争が激しくなって製品の値崩れが起こるような事態をおそれ、生産を減らすといった消極的な反応をするのであれば、このような情報開示は、A社にとって有利となります。
理論研究の条件設定
このように、ライバル会社との相互作用の中で、情報開示はさまざまな効果をもつ可能性があります。どのような場合に、どのような効果が、どのようなメカニズムで働くのかを考察するうえで、数理モデル分析は有効な手段のひとつです。数理モデル分析によれば、分析における前提条件(仮定)や、結論に至る論理の展開がより明確になるからです。
数理モデル分析では、条件設定によっては正反対の結果が出ることもあります。基本的には、「会社は利益の最大化のために行動する」という条件のもとで分析がおこなわれますが、近年はSDGsの浸透などにより、自社の利益の最大化以外の要素を重視する会社も増えていると考えられます。こうした時代の流れを条件設定に反映する研究もみられます。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 経済学部 経済・経営学科 准教授 三輪 一統 先生
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