膨大で多様なデータを分析し、意思決定に結び付ける統計学の可能性
情報を意思決定に結び付ける
普段着ている服は、店頭に並ぶ数か月前につくられたものです。メーカーとしては、作りすぎると売れ残り、逆に不足すると売り上げが減ってしまいます。こうした時こそ、統計学の出番です。前年、前月などの売り上げ枚数をベースに、アイテムごとの売り上げ枚数を予測することができます。AIによる機械学習も、膨大な情報を読み取って予測を行いますが、その過程は明らかにされません。統計学は、「なぜその答えになるのか」という要因を明らかする学問であることから、「この服は何枚つくればよいのか」といった意思決定に役立てられる点が特徴です。
膨大かつ多様な情報を分析
統計学は、さまざまなデータを取り扱うデータサイエンスに含まれる学問です。中学校で習う「平均」や「分散」も、統計学の入門的な要素です。現代では、スマートフォンなどのデバイスの普及やセンサ技術の発展によって、画像や音声認識、位置情報といった情報が膨大に記録され、また社会の中で広く共有されるようになりました。統計学の分野でも、従来の手法では分析できないケースも増えており、新たな分析方法の開発や、これまでにない切り口でデータを分析する視点が求められています。
位置情報の活用も
近年注目されているデータに、位置情報があります。例えば、サッカーの試合ではボールや選手の位置はもちろん、走行量、速度、加速度などが全選手分データ化され、チームの強化やスカウティングに生かされています。また、スマートフォンを通して人が移動する様子がリアルタイムでわかるため、災害時に、ある領域・時間の中で動く人の数や方向、避難所への人の流れ方などを分析して、防災に役立てられます。
以前は、統計データを扱う企業は製薬企業などの特定分野に限られていましたが、近年ではあらゆる分野で求められています。高校数学でもデータ分析が必修化されており、データサイエンスや統計学の重要性は今後ますます高まっていくといえます。
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同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 教授 宿久 洋 先生
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