「形を与えて悩みを解決」する認知行動療法とは?
子どもの不安を解きほぐす
不安は誰にでもある当たり前の感情です。その感情がほかの人たちと比べてとても強かったり、なかなか晴れなかったりして、日常の生活に支障をきたす場合、何らかの支援が必要です。支援が必要な不安のことを「不安症」と呼んでいます。そして、不安症の支援には「認知行動療法」が有効です。
自分の困っていることに形を与える
人間の感情には形がありません。不安も手で捕まえることはできません。しかし主観的には確かに存在しています。認知行動療法では、困っていることに対して、「形を与える」努力をします。例えば、小さなミスをとても大きなものに感じてしまう場合、その傾向を児童では「おじゃまむし」などと名づけるのです。そして、子どもが心の中に飼っている「おじゃまむし」の声を小さくするにはどうしたらいいかと一緒に考えていきます。欧米と日本で比較してみると、こういったやり取りでの文化の違いがあることがわかります。欧米では正確な感情語で相手に伝えることが多いのですが、日本ではあいまいな表現を使うことがあります。そうした傾向をふまえ、子どもにとってピッタリくる言葉を使いながら支援していくことが大事なのです。
困難を乗り越えてしまえば変われる
子どもが困難を乗り越えるうえで大切なこと、それは現実場面でのチャレンジです。鉄棒の逆上がりと同じように、実際の練習とその積み重ねは何よりも子どもの力になります。心理師は、不安な場面でのチャレンジを子どもと一緒に考えて、階段を上るようにスモールステップで取り組んでいきます。認知行動療法で子どもが自分の悩みを克服できると、まるでその悩みが最初からなかったかのようにふるまうことがあります。言い換えると、それはその子の考え方が変わった証拠です。ここまでくれば、その子は自分からいろいろなことにチャレンジできるようになるでしょう。認知行動療法では、子どもから感謝の言葉をもらうことはめざしません。子どもの自立性を支援することが最終的な目標になります。
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先生情報 / 大学情報
同志社大学 心理学部 心理学科 教授 石川 信一 先生
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