バラツキから投資戦略を考える

バラツキから投資戦略を考える

投資を考えるときのポイント

例えば、A・B・Cの3つの銘柄に対して株式投資を検討しているとします。AとBの株価は同じ値動きをすることが多く、AとCの株価はそれぞれ逆の値動きをします。この場合、AとBの組み合わせはAとCの組み合わせに比べると、株価が上がった際のリターンが大きくなる一方で、株価が下がった際のリスクも高まります。投資にあたり、リスクとリターンをどの程度把握しておくかは銘柄選びの重要なポイントです。

数学Iからの高度な応用

投資において、価格の変動を示す指標に「ボラティリティ(Volatility)」があります。期待される収益が期待通りになる度合いを示すボラティリティは、高いほど変動が大きい、つまり期待から外れる可能性が高いことを意味します。一般的にはボラティリティが高いものはハイリスク・ハイリターンで、低いものはローリスク・ローリターンとみなされます。ボラティリティは、基本的には高校の数学Iで学ぶ「標準偏差」や「分散」といった、集団の平均からのバラツキを表す値で示されますが、統計学の知見を用いた、予測の精度を高めるための応用研究が活発に進んでいます。そのひとつが、実際の株式市場の株価のデータをもとに、時間によって「相関」や「分散」が変動することを数学的なモデルを作って検証する研究です。この研究では「ベイズ推定法」や、そのアルゴリズムとなる「マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)」といった手法も用いられています。

金融以外でも役立つ統計学

こうした研究が活発になった背景には、以前よりも金融市場の取引データが増えたり、ビッグデータが身近なものとして取り扱えるようになったりしたことも挙げられます。
ビッグデータと統計学の知見を用いた研究は、金融以外の経済政策の領域でも増えています。
例えば、医療・介護保険の支出に関するビッグデータを分析することで、在宅医療やデイケアといった内容ごとの支出パターンを明らかにして、効果的な政策提言につなげる研究も行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

高崎経済大学 経済学部 経済学科 准教授 石原 庸博 先生

高崎経済大学 経済学部 経済学科 准教授 石原 庸博 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

計量経済学、計量ファイナンス

メッセージ

文系科目が得意という以上に、「数学が苦手だから」という理由で文系を選択する人もいるかもしれません。あなたが文系であっても、数学の勉強を諦めないでほしいです。近年は経済学だけでなく、歴史や文学などにおいても、ビッグデータや統計手法を用いた研究が注目されています。データを扱う上で欠かせないのは数学の基礎知識です。教科書をよく読んで、基本の問題を解くだけで全く違います。学びの選択肢だけでなく、社会生活で見える景色も確実に変わります。

高崎経済大学に関心を持ったあなたは

高崎経済大学は、約3万人近くの卒業生が全国各地で企業のトップや地域で官民リーダーとして活躍しています。本学の教育・研究の目的は、幅広い教養を身につけ、豊かで、幅広い人間性に富み、国の内外と地域の向上発展に寄与する人材を育成することです。また、「自主・自立」を理念とし、学生の自主性を尊重するとともに、自立性を助長することを大学教育全体の方針としています。
全員が少人数のゼミナールに所属します。ゼミナールでは専門知識の取得とともに、地域・社会活動などのフィールドワークが取り入れられています。