環境にやさしいプロセスを可能にする「超臨界流体」
「超臨界流体」って何?
物質には固体・液体・気体の3つの状態があり、どの状態にあるかは温度と圧力によって決まります。温度と圧力を上げて臨界点に達すると、液体と気体の密度が同じになり、それを超えると物質は液体と気体の性質を併せ持った状態になります。この状態になったものを「超臨界流体」と言います。超臨界流体は、圧力を上げると物を溶かす能力(液体)を示し、圧力を下げると拡散能力(気体)を示すことから、物を溶かし出す抽出溶媒として制御し易いのが最大の特徴です。超臨界流体の物質としては水と二酸化炭素がよく使われています。
コーヒーのデカフェもできる
二酸化炭素は比較的低い温度で超臨界状態になるので、工業的によく使用されています。超臨界二酸化炭素はさらさらとして密度が高く、ちょっとした温度差で、対流が生じ易く、乾燥操作に使用した場合では収縮や割れが発生し難いことから、ドライクリーニングへの適用や、文化財の保護処理などにも活用されています。また、コーヒーからカフェインを取り除くデカフェ技術にも応用されています。天然物から香料を取り出す技術としても使われるなど、利用の分野は広がっています。
超臨界流体は環境にやさしい
従来の化学プロセスでは、水に溶けない物質を溶かすために有機溶媒を多用してきました。有機溶媒には環境や人に有害な化学物質が含まれ、そこからVOC(揮発性有機化合物)も排出されます。しかし環境に対する意識の高まりから、豊富な資源でもある二酸化炭素や水を使う超臨界流体が大きな注目を集めるようになりました。VOCの排出量が多い塗装業界でも、超臨界二酸化炭素を取り入れた塗装法の研究開発が進んでいます。塗料の噴射ノズルの閉塞防止など、さまざまな課題を解決しながら、有害物質の排出削減はもちろん、効率向上やコストダウンにもなる工業的な利用が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東北工業大学 工学部 環境応用化学科 教授 佐藤 善之 先生
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