なぜ「土の揺れ」を予測するのか
重要施設と地震の関係
日本は地震が頻繁に起こりますが、地震でも絶対に壊れて欲しくない建物があります。何かあった場合、他の施設に比べて被害が甚大になる原子力発電施設です。原子力発電施設では、大きな地震が発生したり、技術が進歩したりすると、ふりかえって既にある構造物も大丈夫か確認する義務があります。意外に思うかもしれませんが、他の構造物ではこのような義務はありません。さらに、普通の構造物では「その地震には耐えられます」ということを確認するだけですが、原子力では想定を超える地震が発生したら何が起こるのか、復旧や避難のシナリオはどうするのかといったことへの対応も求められます。そのため、考えて、予測して、確かめての範囲が広がり続けています。
地震リスクの考え方
足元の地盤の研究では、実験により土の動きを数値解析して揺れによる変形を評価し、構造物にどんな影響を及ぼすかを観察します。地盤はバネのような「力を取り除けば元に戻る」といった分かり易いものではなく、粒々が集まっただけの土や亀裂が入っている岩盤なので元に戻らない性質も考えて評価する必要があります。そもそも「そこに何があるのか」といった調査も必要です。コストを度外視すれば自然の土や岩を全て管理できるコンクリートに変えることも考えられるかもしれませんが、エネルギーコストが上がり過ぎると経済に影響し別の危機を招きます。ものごとは単純ではなく相互に影響する色々なことを考えて合理的に決めていく必要があります。だからこそ「絶対安全」とは言えないけれども、最小限の被害で収まるように「揺れ」の予測精度を上げる必要があります。
進化する「揺れ」の測定とこれから
すぐ足元の土の動きに関する研究は、ものすごく複雑な「非線形」と言われる領域まで予測する技術が開発されてきました。その一方で予測した結果がどのくらい正確なのかを評価する技術は確立されておらず、まずは地盤の中で実際に起きていることを計測する技術の開発が進められています。
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