次世代型界面活性剤で、汚れを溶かす!

私たちの生活に欠かせない界面活性剤
界面活性剤は疎水基と親水基を併せ持つ物質で、水と油のように本来まったく混ざらないものを混ぜ合わせることができるため、化学工業のいろいろな分野で使われています。例えばマヨネーズやクリームのように、私たちの身の回りの食品、化粧品、医薬品などにも界面活性剤を使って混ぜ合わせられたものがたくさんあります。
フッ素系界面活性剤の代替物
フッ素を含む「フッ素系界面活性剤」は、優れた性質により幅広く使われていました。しかし、特に有機フッ素化合物(PFAS)は生体に蓄積するといわれており、人体や環境に及ぼす影響への懸念から、使用が控えられる傾向にあります。そのため、フッ素系界面活性剤の代替となる「炭化水素系界面活性剤」の開発が求められています。
ただし、炭化水素だけでは、フッ化炭素の持つ強い疎水性の再現は容易ではありません。そこで、試行錯誤の末にケイ素原子にメチル基が3つついたトリメチルシリル基という構造を取り入れて、フッ化炭素に似た性質を引き出すことに成功しました。
超臨界二酸化炭素との組み合わせ
このトリメチルシリル基の界面活性剤の用途として期待されているのが、「超臨界」状態の二酸化炭素と水との混合です。物質には固体、液体、気体のほかに、一定の圧力と温度を加えることでできる超臨界流体という状態があります。超臨界流体は液体と気体の性質を併せ持ち、さらに超臨界二酸化炭素には物を溶かす性質があるため、有機溶剤に代わるものとして注目されています。無害で燃えないため有機溶剤よりも安全で、また二酸化炭素の有効利用は温暖化抑制にもなります。
超臨界二酸化炭素の実用化をめざすものの一つがドライクリーニングです。既存の有機溶剤の代わりに超臨界二酸化炭素と水を使うことでさまざまな汚れを除去できます。また、油田の原油の回収に水や二酸化炭素が使われることがありますが、それをこの界面活性剤で泡立てて使うことで、砂利の隙間にある原油まできれいに回収することが期待されています。
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弘前大学理工学部 物質創成化学科 教授鷺坂 将伸 先生
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