AI(人工知能)が建築設計を受け持つ時代へ
人手不足解決の切り札はAI?
建築設計は、大きく「意匠設計」と「構造設計」に分かれています。デザインやどんな建物にするかを考えるのが意匠設計で、建物の安全性を確保するための柱や梁、鉄筋の太さや本数などを詳細に決めるのが構造設計です。構造設計者が、自分の知識や経験などに基づいて大まかな柱や梁などのサイズを設計し、建物の性能が建築基準法で決められた基準を満たしているかを細かく計算します。それをまた1つひとつチェックして修正を繰り返し、設計図を仕上げていくのです。
近年の少子高齢化によって、建築業界は人手不足という大きな課題に直面しています。そこで、構造設計の分野に、AI(人工知能)を組み込んでいこうという試みが始まっています。
人間の脳神経の仕組みをまねたディープラーニング
2015年に、初めてプロ棋士を破って話題となったコンピュータ囲碁プログラムがありましたが、これはAIの進歩に大きく貢献した「ディープラーニング」という技術を使ったものです。人間の脳神経細胞(ニューロン)の仕組みをまねたニューラルネットワークをベースにしたシステムで、以前にはできなかったより深い学習ができるものです。
ディープラーニングでは、建築物の膨大なデータをコンピュータに学習させることで、単なる知識だけでなく、人間が長年の経験で身につけた勘や試行錯誤まで学び、さらにはコンピュータ自身が学んだことをフィードバックすることもできます。
AIと人間が協力して建築設計を担当
AIに学習させるデータをそのまま数値化するのは難しく、何をどう入力するかということは大きな課題です。AIに完全に任せる構造設計はまだ実現していませんが、簡単な建築物であれば、そろそろ実現可能です。デザイン性などのセンスやオリジナリティが必要となる部分は人間が担当し、構造設計分野はAIが担当する、という時代もそう遠くはありません。
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東北工業大学 建築学部 建築学科 准教授 曹 淼 先生
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