PLD法でつくる世界最小の永久磁石モーター
世界最小の永久磁石モーター
デジタルカメラや、ウェアラブルデバイスなど、電子機器の普及と高性能化にともない、その部品であるモーターにも、これまで以上に小型・軽量化が求められています。モーターの大きさは、内部に使われている永久磁石の大きさに影響されます。従来は、磁石の粒を接着剤でつなげてつくる「Nd-Fe-B系ボンド磁石」が使われてきました。形状を変えやすく生産もしやすいというメリットがある半面、肉厚0.4mm以下にすることは困難というデメリットもあります。こうした課題を解決するのが、PLD法という新たな方法でつくられた、世界一小さな永久磁石モーターです。
PLD法とは
PLD法は、紫外線レーザーを使って数マイクロメートルの永久磁石の粒を飛ばし、基板の上に堆積させて磁石の膜をつくっていく方法です。接着剤を使わない分、より小さな磁石を成型することができ、磁石が占める比重が高まるので得られる(静)磁気エネルギー(磁力の強さ)もより強くなるのが特徴です。熱が発生しないため表面の磁気特性が保たれます。また、真空中で成型を行うため、酸化による劣化を防げるという品質面のメリットもあります。これにより、それまで世界最小であった直径3.3mm、磁石の肉厚0.4mmをさらに下回る、直径2.9mm、磁石の肉厚0.25mmという世界一小さなモーターが生まれました。
医療分野への貢献も期待
現在は製品化に向けた準備が進められており、将来はさまざまな電子機器に搭載される予定です。特に期待されるのは医療分野です。例えば、医療用カメラに搭載するモーターが小型化できれば、より患者への負担が少なくなります。小型モーターの世界市場は、今後もさらなる大幅な伸びが予測されています。その小型・軽量化のカギを握る磁性材料学や磁気工学といった学問分野にも大きな期待が寄せられています。
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先生情報 / 大学情報
長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース 教授 中野 正基 先生
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磁性材料学、磁気工学、電気電子材料学先生が目指すSDGs
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