次世代の電気自動車を実現する技術、パワーエレクトロニクスとは
パワーエレクトロニクスシステムで効率化
私たちの回りには、モーターを利用した数多くの電気製品があります。例えば、EV(電気自動車)では、バッテリーが搭載されていて直流の電気エネルギーを蓄えています。これを交流の電気エネルギーに変換して、交流モーターから駆動力を得ています。この時に、交流モーターの回転数や駆動力をバッテリーのエネルギーを無駄にしないように制御しています。このような、電気エネルギーの変換や制御を中心とした応用システムを「パワーエレクトロニクスシステム」といいます。モーターや電力変換装置、そして制御技術を高めることで、より航続距離の長い高性能なEVが実現されます。
走行条件に合わせて効率よく動くモーター
モーターは磁束と電流の積に比例した駆動力を発生します。EVでは大きな磁束が得られる永久磁石を利用した、永久磁石交流モーターが使用されています。この永久磁石には性能を高めるためにレアアースが使用されていて、資源調達が不安視されています。また、永久磁石交流モーターの効率が最もよいのは、時速50km程度で平坦な道を走るときに限られます。実際には、車はさまざまな条件で走行しています。そこで、永久磁石を使用しないで、走行に合わせて効率がよくなる磁束の大きさと電流を制御できる、新しい交流モーターの開発が期待されています。
自在なエネルギー変換とロスを減らす電力変換技術
交流モーターを動かすためには、バッテリーの直流エネルギーを交流エネルギーに変換するインバータという電力変換装置が必要です。この装置には半導体を利用したスイッチが利用されていて、直流を交流に効率よく変換することができます。新しい交流モーターは、磁束を発生させるために電磁石の原理を利用しているため、走行に合わせて効率をよくする制御に加えて、複雑な制御方法が必要となります。
エネルギーの効率的利用は、環境を重視する次世代の大きな課題です。パワーエレクトロニクスシステムは、そのための重要な技術を提供するのです。
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先生情報 / 大学情報
長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース 教授 阿部 貴志 先生
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